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2007.04.01

「天保異聞 妖奇士」 幕間「ヒトハアヤシ」

 前島聖天を襲撃する西の者。宰蔵の犠牲で逃れた小笠原だが、幕閣は蛮社改所を鳥居が設置したものとして諸共に葬り去ろうとする。鳥居と共に前島聖天に取って返す小笠原だが、その前で西の者はアトルの力を使い、その地に眠る巨大な百足の妖夷を復活させる。が、その場に元閥の漢神の力で人に戻り、機会を見計らっていた往壓が現れる。奇士たちの、鳥居の漢神の力は西の者と妖夷を打ち砕き、異界に去ろうとしたアトルも、往壓の想いに応え帰ってくる。幕府の機関ではなくなった奇士。しかしその後も彼らの活躍は終わることなく、人々の間に物語られていくこととなる…(完)

 ついにこの日が来てしまいました。「天保異聞 妖奇士」の最終回です。…が、悪く言えば詰め込みすぎ、良く言えば見所だらけの展開で、最後の最後まで一瞬たりとも油断できない展開、大いに楽しませていただきました。
 あまりに語るべき内容が多いので、主にそれぞれのキャラ方面から取り上げさせていただきます。

○鳥居様
 終盤に来て急に「実は善人」度が増した感のある鳥居様。身も蓋もない言い方をしてしまえば、これは終盤駆け足になった分の描写不足から来る錯覚であって、あくまでも彼にとっては幕府が大事、そのためには個人の命は軽く見るであろうことはこれまでの物語で語られた通りでしょう。それでもなお、彼もまた己の信念を持って生きてきた一個の大人物であることは言うまでもありません。
 最終決戦では、刀を抜いてまさかの戦闘を演じた上、漢神まで登場(でも捻りがない上に勝手に他人に使われる)。それ以上に、事件を闇に葬った上に返す刀で水野忠邦を失脚させ、さらに自分と小笠原におとがめなしという鮮やかすぎる戦後処理で大活躍ぶりにはただただ感心。
 史実ではこの後、復讐のためだけに復帰してきたような水野に反撃されて失脚、四国丸亀に押し込められるのですが、物語が続いていたらここまで描かれていたのかな? 何はともあれ、名優・若本規夫の演技もあって、単なる悪役ではない厚みのある人物として描かれていたのは、本作の収穫の一つだと思います。
 じゃあ次は「大江戸ロケット」で!

○えどげん
 番組打ち切りで最も割りを喰ったのは、まちがいなくこの人でしょう。往壓から宰蔵・小笠原・アビとそれぞれの過去編が描かれてきて、さあこれから、というところで…正直なところ急すぎた最終三部作での変心ぶりも(さらにラストのどんでん返しも)、えどげん過去編が描かれていれば、また違ったものとして見えたであろうことを考えると残念です(もしかすると「狼人同心」とのリンクもあったかもしれないしね)。
 漢神二つは、彼が(設定的に)陰陽合わせ持つキャラクターだからかしら?

○小笠原様
 終盤は上と下の板挟みで色々とかわいそうだった小笠原様。この辺りの描写は、一年続いていればもっとねっちり描かれていて、もしかすると軟禁どころでなく洒落にならない扱いになっていたのでは、という気もするので、まあこのくらいで良かったのではないでしょうか。
 …というか、もうファイティングナックル装着してからのはっちゃけぶりで全部吹っ飛んだよ! もうすんげえノリノリなんだもん! 「リングにかけろ」並みに敵をブッ飛ばしておいて、ファイティングポーズとともに「もはや私に刀は要らぬ!」ってそりゃ要らないよ! いやはや、この最終回の持つ爽やかさの半分くらいは、小笠原様の暴れっぷりによると思います。
 結局地下に潜った奇士たちの中で、唯一公の身分を持っているだけに、この後の方が板挟みは酷くなるんじゃないかと心配になりますが、宰蔵もいるし、身分的には一番君が勝ち組だ! …幕府が続く限りは。

○西の者
 何だか物語を終わらせるためだけに出てきたような扱いになってしまった彼ら。しかし説二十四の感想にも書きましたが、実は後南朝でした! というだけで伝奇ファンとしては満足です。朱松(ずっと赤松だと思ってたよ…)は滅んだものの、彼がリーダーであっても首領とは一言も言っていないわけで、まだ西の者全体の暗躍は続くのではないでしょうか。首もまだありそうですし。
 しかし、量産型テレホマン/´∀`;::::\になったり、宰蔵と踊り対決をするかと思ったらいきなりブッた斬られたり、全般的に彼らも(やられ役として)はっちゃけていたのが素敵。

○アトル
 ラスト近くになって中二病を発症して色々と心配させてくれた彼女ですが、よく考えたら登場したときからそんな感じだった、というか登場する度(除く日光編)に話が暗い方向に向かってたような気がします。ということはこの子のおかげで…という気もしますが、それはちょっと酷な話。重い過去を背負った登場人物ばかりの中で、掛け値なしに一番重い過去を持っていたのが最年少の彼女だったのは間違いありません。
 そんな彼女を異界から現世に引き戻すきっかけとなったのが、ある意味アトルとはネガとポジの関係とも言える往壓だったのは、当然と言えば当然ですが、さすがに「俺は君がいないとダメなので側にいてください(意訳)」呼びかけるとは思いもよらなかったなあ…が、これまで孤独の中で生きてきた彼女にとって――いや、これは人間全般にとってかなり普遍的な話かと思いますが――誰かが自分を必要としてくれているというのは、自分自身の価値を認めてくれる人がいたということであり、何よりも嬉しいことであることを考えれば、意外ではあるものの、実に納得のできる結末だと思います。

○往壓
 それはそうなんだけど、四十目前のニートが十代の娘つかまえて「俺と一緒にいてください」orzというのは、深読みしなくてもいかがなものか? という気分にもなりますが「まぁ、いいさ!」
 振り返ってみれば、三十九歳という年齢設定が十全に活かせていたとは言い難い部分もありましたが、しかし問題のアトル説得シーンなど、この年になってもダメなんだから本当にダメなんだな、という不思議な説得力があったようにも思います。
 なんだかんだいって、愛すべき主人公であったと心から思います。でも俺はこの年にはもっとまともな人間になっていようと思います<俺ヒドス


 そして奇士たちの物語はひとまず終わりを告げました。が、それは、アニメ番組という形は終わったものの、その中の世界では、逆に彼らの物語が始まるという一種メタな形でもあります。この辺り、いささか唐突ではありますし、理が勝ちすぎている感もありますが、異界に当置される、そして対極に置かれるものとして「物語」が提示されるというのは、なかなかに考えられたオチではありますし、納得できるものもあります。
 これから彼らの物語が、いつ如何なる場で語られるかはわかりませんが――語られること自体はあると信じたいものです。まあオリジナルビデオストーリーはあるようですが――私はこの風変わりで型破りで、欠点も色々あるんだけど愛すべき物語を、これからも語り伝えていきたいと、今は強く感じているところです。


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サブタイトル「ヒトハアヤシ」   西の者たちの強襲を受け、前島聖天を占拠された小笠原。   奇士たちを失い、ひとり前島聖天に戻ろうとする小笠原に声をかけたのは... [続きを読む]

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