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2007.04.05

「幕末機関説 いろはにほへと」 第二十五話「五稜郭浮上す」

 いよいよラスト一話前の「幕末機関説 いろはにほへと」。箱館戦争の陰で――という言葉がそぐわぬほど巨大なものとなりつつありますが――繰り広げられるもう一つの戦いもクライマックス、様々な因縁の糸が、あるものは切れ、またあるものは更に絡まって、最後の舞台に集約されていきます。

 そしていきなり繰り広げられるのは、耀次郎と左京之介の因縁の、そして最後の対決。
 いきなり正直なことを言ってしまうと、バトルの内容としては、屋内での刀と銃のプチマラソンバトルを描いてみせた第八話の薩摩屋敷での決闘には及ばなかった感のある今回の対決。至近距離からの縦断をことごとく刀でブロックしてみせる耀次郎の超人ぶりもさることながら、あれだけ撃っても当たらず、ラストのジョン・ウーチックな体勢からも大して(おそらく)傷を負わせられない左京之介のナニっぷりが、もう何と言ったら…
 が、左京之介の生き様という観点からすれば、何とも考えさせられるものがありました。死闘の最中、トレードマークの眼帯を斬り飛ばされ、顔の傷を露わにした左京之介。彼のコンプレックスの象徴であるその傷を隠そうともせず、「今オレは自由だ!」と叫び、笑みを浮かべつつ戦いを続ける彼は、しかしその言葉とは裏腹に、過去の軛から逃れることはできなかったと言えます。
 彼の心に最後の最後まであったのは、自分を捨てた母ととよく似た面差しの赫乃丈の――それも覇者の首の傀儡と化した赫乃丈の――姿のみ。確かに、他者から蔑みの視線でもって使役される存在であるよりかは自由であるかもしれませんが、それはむしろ己の過去に逃避し、依存したものであります。
 確かに左京之介は安らぎの中で退場できたのかも知れませんが、一体彼は何のために生きてきたのかと、考えさせられてしまいました。

 もう一人退場したのは琴波太夫(正確にはブリュネさんもですが、こちらはたぶんに史実との整合性のためだからいいや)。こちらも最後の最後まで蒼鉄への想いを抱き、その中で死んでいったこととなりますが、本人は満足できても、不知火のように、遺された人間にとっては全くの犬死にであり、見ているこちらの心にも何ともやりきれないものが残ります。
 己が宿命に文字通り殉じた太夫、そして左京之介。…宿命って何なんでしょうね。

 そしてその己が宿命に殉じようとしている人間がもう一人。幼い頃からの宿縁に結ばれた、赫乃丈を斬ってでも覇者の首を封印する覚悟を決めた我らが耀次郎ですが、果たしてその心構えで、覇者の首に打ち勝つことができるのか。
 この物語で唯一、覇者の首の力に負けなかった人物が、何にもとらわれない、こだわらない心を持っていたことを、耀次郎は思い出すべきではないでしょうか。

 さて、その耀次郎を赫乃丈、そして榎本と共に待ち受けるのは蒼鉄先生。これまで全く正体不明であった先生の過去につながる描写が、ようやく描かれました。
 蒼鉄を「和子」と呼ぶ、奇怪な公卿姿の男。桐紋を擁し、五百年の歳月を経て、歴史の表舞台に返り咲こうとする彼らは――って、ネタかぶってませんか!?

 それはさておき、その一族の五百年間にわたる怨念や期待を一身に背負ってきたのが蒼鉄先生ということなのでしょう。それが、蒼鉄先生の宿命――また宿命です。

 その蒼鉄先生たちが行う奇怪な儀式により力を得た五稜郭は、天変地異すら引き起こしてついに浮上、覇者の首の力を日本に、世界に広げんとしますが、さて、蒼鉄先生の真意は奈辺にあることでしょうか。
 次回予告で思いっきりバレているような気がしますが、先生は、己が宿命を疎み、それから逃れようとしているようにも思えます。しかしそれが己の力ではなし得ないからこそ、誰かの力を必要としているのではないか――そしてその誰かこそは、先に述べた覇者の首の力に囚われなかった自由な精神を持つ男の、その想いを受け継いだ者ではないかと思うのですが、さて。

 微妙に最終回の後に書くべきことを書いてしまったように思いますが、果たしてこちらの予想通りとなるか、はたまた全く予想外の結末となるか――いずれにせよ、最終回が楽しみでなりません。


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