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2007.05.31

「大江戸ロケット」(舞台版) ジュヴナイルの良作ここに復活

 先日発売された「劇団☆新感線 20th Century Box」のおかげで、ようやく舞台の「大江戸ロケット」を観ることができました。
 一言で表せばよくできたジュヴナイル、少年が異星の少女と出会い、様々な妨害や困難に遭いつつも、周囲の善意に助けられて少女を宇宙に帰そうとするお話であります。

 もちろん、そんなある意味ベタなお話を、江戸時代を舞台にやってしまうのが中島かずき氏の、そして劇団☆新感線の工夫であり趣向であるところ。江戸時代にロケットを、それも花火の玉屋をはじめとする江戸の職人たちが上げてしまおうというほとんど一発ネタみたいなアイディアを、演劇的な意味でも時代劇的な意味でも、大まじめにやってしまった、そのパワーと熱意にはただただ感心するのみです。
(時代劇ファン的には、○○○○の口利きとはいえ、あまりにあっさりとロケット開発が認められた裏に、ロケットをある目的で使おうとした××××の意図が! という辺りの一種のドンデン返しのうまさに唸りました)
 もちろん、舞台ゆえの制限というものはもちろんあり、ロケットの打上げシーンなど「アレっ」という部分もあるのですが、しかし舞台上でワイヤーを使って人を飛ばすというシンプルかつ豪快な演出をうまく使って、空間的に広がりのあるシーンなども用意されていて、この辺りのケレン味はさすがは――と言うしかありません。

 とはいえ、ちょっと気になったのが、清吉サイドの物語と、銀次郎サイドの物語があまり噛み合っていないように感じられた点。山崎裕太演じる清吉のサイドが、色々な意味で若い演技だった一方で、古田新太演じる銀次郎のサイドは演技的にも物語的にもしっかりとしすぎていて…もちろん、この切り分け/対比は言うまでもなく意図した演出ではあったのだと思いますが、ちょっとキレイに分かれすぎてしまったかなあ、という印象です。
 また、この両者が交わるクライマックスが、ラストではなく中盤に用意されているという構成にも、こうした印象の原因があるように感じました。

 もっとも、この辺りは、あの実に情けない(役者個人が起こした)事件による中途での主役交代に起因する部分もなしとは言えませんし、そんな逆境をはねのけるかのような出演陣の熱演にはただただ敬意を表するのみです。
 そして、そんな時に
銀「ネズミ花火を末端価格二グラム二万円で所持した男。それがお前、玉屋清吉だ」
清「いや、俺じゃねえだろ!」
などというネタをブチ込んでみせたのは神というか鬼というか。


 さて、最後に現在放映中のアニメ版と比べてみれば、アニメ版においては、演劇というメディアの空間的・時間的制約上できなかったアイディア/描写を――例えばロケットや花火の打上げの描写であったり、より細やかなキャラクター描写やストーリー展開であったり――やってみせようという姿勢が強く感じられます。
 もちろん、三時間ほどの舞台と、半年全二十六話放映のアニメでは、当然変わる点、変えるべき点はあるわけですし、当たり前と言えば当たり前ではあるのですが、しかし原作を活かしつつよりよいものを作り出そう――そしてその中で、こちらのスタッフなりの味わいを生み出そう――とめざし、そして今のところそれをきっちりと成功させている点は、実に嬉しく、頼もしいことであります。

 例えば――これはネタバレにつながりかねないお話ですが、現在アニメの方で視聴者の関心を一心に集めている(?)赤井様と青い空の獣のエピソードなど、舞台の方では本作最大の穴とも言える部分であって、そこをこうも見事に昇華してみせたのには、ただただ感心するのみです。

 何はともあれ、舞台の方を最後まで観てしまったら、アニメの方がつまらなくなるのではないか、というのは全くの杞憂でありましたし、それは逆にアニメを観てから舞台を観ても、十分以上に楽しめるということでありましょう。
 本作のDVDが、現時点ではBOXでのみの発売というのは非常にもったいないことではありますが、機会があれば、是非両方を見比べて、そして楽しんでいただきたいものです。


 ちなみに…丁度この記事を書いている時に、ソラを演じた奥菜恵さんの引退のニュースを聞きました。本作では実に楽しそうに演じられていただけに、何だか複雑な気分です。


「大江戸ロケット」「劇団☆新感線 20th Century Box」収録)


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