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2007.05.25

「海の荒鷲」 さすがは大佛先生…?

 あの大佛次郎先生が、「少年倶楽部」誌に昭和八年に連載した時代冒険小説が、この「海の荒鷲」。強い正義感を持った少年武士・椿新太郎が、瀬戸内海を舞台に、薩摩の御用金を奪った海賊・味岡太郎左衛門や、その上前を跳ねんとする奸悪な武士たちを向こうに回して大活躍する、はずなんですが…ですが…
 この新太郎少年、はっきり言ってしまえばとにかく活躍しない(できない)。冷静に読み返してみると、冒頭で海に落とした老武士の紙入れを拾ってあげた他はほとんど何も成し遂げていないのには驚かされます。
 周囲の状況に振り回されて、次々と窮地に陥る新太郎君を見ていると、…もしかしてこの子はヒーローではなくてヒロインだったのかしらん(悪漢に捕まる回数でいえばヒロイン役の女の子と同じくらい)、と思ったりしてしまったのですが、それはともかく。
 が、これが作品としてつまらないかというとそうではなく、一気にラストまで読まされてしまうだけのパワーがあるのが面白いところです。ストーリーに起伏があまりなくても、主人公があまり活躍しなくても、個々の場面、個々のキャラクターの描写がしっかりとしているので、それなりに緊迫感をもって楽しめるのです。この辺り、さすがは大佛次郎先生…と感心いたしました。
 もちろん、今から七十年ほど前の子供向け小説を、現代のおっさンが見てどうこう言う自体がナンセンスではありますが…(でも、同じ雑誌の同じ作者の「角兵衛獅子」は今読んでもガチで面白いんですよね)


「海の荒鷲」(大佛次郎 講談社少年倶楽部文庫)

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