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2007.06.22

「討たせ屋喜兵衛 秘剣稲妻」 討たせ屋稼業始まる

 第一巻「討たせ屋喜兵衛 斬奸剣」で登場、紆余曲折の果てに吉原で「討たせ屋」を開業することとなった鈴鳴喜兵衛。その討たせ屋稼業での、喜兵衛たちの本格的な活躍がこのシリーズ第二巻「秘剣稲妻」では描かれます。同時に、第一巻ではまだ遠景にあった江戸時代最大の仇討ち事件が、いよいよ物語の前面に現れてくることとなります。

 ある日喜兵衛のもとに現れた仇討ち旅の沢田兄妹。松江藩士であった父を、藩の御番医師・半井に殺害された二人は、逐電した半井を追う途中、討たせ屋の噂を聞き、助太刀を依頼してきたのでした。早速調べに当たった喜兵衛ですが、兄妹につけられた助太刀の数が多すぎることに不審の念を抱きます。調査を進めるうちに、喜兵衛は半井が意外なほど身近にいることを知りますが、彼の逐電の陰には、かつて喜兵衛自身を罠に嵌めた巨悪の姿が…

 討たせ屋という聞き慣れない稼業――これは、喜兵衛と吉原の花魁・千歳太夫が中心となって、仇討ちに対してその背後関係を調べ、仇討ちに理があればこれを助け、非があればこれを止めさせるというものであります。無実の罪とはいえ、かつての主家で人を殺め、仇持ちとなって流れ流れて吉原に辿り着いた喜兵衛と、武家の娘に生まれながら、仇討ちのために花魁に身をやつした千歳は、追われる者と追う者という立場の違いこそあれ、仇討ちに己の運命を狂わされた者同士。仇討ちというものの辛さを骨身に沁みて知っている二人であればこそ、このような奇妙な稼業を思いつき、そして実現させたと言えます。

 その討たせ屋喜兵衛が挑んだ今回の事件、一見普通の(?)仇討ちのようでありながら、真相を探るうちにいつの間にか喜兵衛たちとも無縁でないことがわかり、やがてクライマックスの大殺陣に雪崩れ込んでいくこととなります。が、そこにもう一人絡んでくるのが、本作のヒロインの一人・久宝伊織サマ。。かつて父を喜兵衛に斬られた(もちろんやむを得ぬ仕儀ではあったのですが)彼女は、弟と共に喜兵衛を追って旅を続けているのですが、これがまた直情径行で世間知らずの武術バカという実にとんでもないキャラであります。。
 この伊織、喜兵衛を悪人と思いこんで執念深く追ってくるのですが、諸般のややこしすぎる状況で、喜兵衛に純潔を捧げてしまったというからまた大変なことに。さらに、第一巻のラストで喜兵衛が鬼面をつけての大立ち回りで悪人ばらを一掃した際に、その正体を知らずに助けて以来、その鬼面の人が気になって仕方がないという…時代劇のお約束(と反則)を体現したような見事な武闘派ヒロインで、実に愉快です(と言ったら本人にブッ飛ばされそうですが…)。

 さて、本作では本筋の事件の一方で、千歳太夫が、何者かに追われる播州浅野家の浪人(時代劇ファンであれば、なるほど、とニヤリとできる人物)を救ったことで、あの赤穂浪士の仇討ち事件に巻き込まれていくこととなります。おそらくは、いや間違いなく喜兵衛の稼業に密接に絡んで来るであろうこの「忠臣蔵」世界が、この「討たせ屋」世界でどのように描かれることとなるのか。個人的に私が「忠臣蔵」で一番好きな清水一学もずいぶんと格好良く描かれておりますし、これはこの先が楽しみです。


 …でもね、今回も一部女性キャラの扱いが非道かったのがちょっと(´・ω・`)


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