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2007.06.27

「無限の住人」第二十一巻 繋がれた二人の手

 もう色々と大変だった(主に読者の方が)「不死力解明編」も完結し、いよいよ最終章突入! という触れ込みの「無限の住人」第二十一巻。実に連載開始から十三年、遂にここまで…というのが正直なところです。
 しかし物語の方はそんな感慨とは無縁に、アクションにギャグにラブコメ(?)にと快調そのもの。ただでさえ相当な人数に達しているこれまでに登場人物ほとんど全員を登場させつつ(出てきてないのは百淋と偽一くらいのもの?)、この巻でドドッと新キャラクターを登場させて、それを過不足なしに動かして見せているのは見事なものです。

 さて、束の間の平穏を手にしたかに見えた万次と凛ですが、彼らの周囲の状況は不穏の一言。
 万次と凛らの手により不死力解明実験を粉砕された上に江戸城内で大騒動を引き起こされることとなった咎で、新番頭・吐鉤群は一ヶ月後の切腹を申しつけられますが、しかし逸刀流壊滅に執念を燃やす吐は、無骸流に代わる新たな私兵として六鬼団なる剣士団を編成することとなります。
 この六鬼団、腕利きの死罪人を罪の減免と引き替えに手駒にしたもの…って、無骸流と全く同じパターンなのには驚きましたが、あえて差違を探せば、市井に紛れて活動していた無骸流に対し、六鬼団の方は初めから完全に戦闘スタイルで(雑魚構成員なんて鬼面だし)、戦闘に特化していることをうかがわせます。

 一方、逸刀流の方も、往事には及ばぬものの、その剣力を慕う剣士たちを加え、幕府に一矢報いんと暗躍を開始します(ここで、凶相手に「暴れるぞ」と耳打ちする天津さんが妙に生き生きとしていて…槇絵さんと一緒にいるときは今にも二人揃って死にそうなのにな)。

 かくて江戸の闇で激しくぶつかり合う二つの勢力。その暗闘に巻き込まれて万次は六鬼団の手で塒を焼け出され、人様の家とはいえ、凛と一つ屋根の下で暮らすことに相成ります。
 ここで大笑いさせられたのは、万次が六鬼団に襲われるきっかけとなったのが、逸刀流の馬絽佑実に間違えられてだった、というところ。この馬絽というキャラ、初登場の時から万次に印象が被っていたのですが、まさかこんなところでネタになるとは思いませんでした。

 それはさておき、うれしはずかし布団を二つ並べての夜を迎えた万次と凛ですが、ここで凛が勇気を振り絞ったことで、二人の関係についに変化が…生じるかどうかは、最初から読んでいる人間であれば容易に想像がつくかとは思います。はい、その通りです。
 しかし、互いに互いの存在を必要としつつも、素直になれない二人の姿は、何ともこそばゆくも微笑ましいもの。特に本作においてはカップルはものすごい高確率で悲劇…というより悲惨な目に遭っているだけに、この巻での万次と凛の姿を見ると、ホッとさせられるものがあります。
 もっとも、如何なる形になるかはまだわからないものの、この二人の間にやがて別れが訪れることはまず間違いがないこと。それを考えると実に切ないのですが、しかしそれだけに、凛の万次に対する想いを綴ったモノローグが胸に沁みますし、二人の手が、せめて少しでも長く繋がっていて欲しいと感じさせられます。

 そんなこちらの期待とは裏腹に、事態はますます混迷の一途。六鬼団と逸刀流の暗闘に加えて、吐の後任は逸刀流との裏取引で吐の足を引っ張ろうとするわ、相変わらず尸良は登場するだけで胸糞悪いオーラを漂わせているわ――
 この先、三つ巴どころか四つ巴、五つ巴になりかねない状況で、さてまだまだ戦いは長引きそうですが、しかしこの巻のようにバランス良く物語が展開するのであれば、長引くのも大歓迎かな、と感じているところです。


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