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2007.06.10

「怪異高麗大亀獣」 地獄の三題噺!?

 来月久々に祥伝社から単行本が発売される荒山先生ですが、その中におそらく収録されると思われるのが本作。
 十四世紀末~十五世紀初頭の朝鮮を舞台にした本作は、珍しく(?)日本とはほとんど関係のないところで物語が展開していきますが、なんというか、こう…アイディアはもの凄く面白いんだけど勢いに任せてとンでもない方向にすっ飛んでいって大弱りという、正しく荒山作品となっておりました。

 何せ本作の構成要素を簡潔に表せば、
・朝鮮ターミネーター
・シルミド
・亡国霊獣ガメラ(仮称)
という地獄のような三題噺。その他、エロ妖術ありホモくさい美少年あり唖然とするようなネタ文章ありと、ああ、いつもの荒山節だねえ…としか言いようがありません。

 時は十四世紀末。クーデターにより高麗王朝を覆し、自らが王たらんとしていた李成桂のもとに、謎の白衣の女剣士の一団が現れ、彼を暗殺せんとしたところから物語の幕が開きます。
 かろうじてこれを退け、その頭目を捕らえてその口を(山風チックなエロ妖術で)割らせてみれば、彼女たち暗殺団を送り出したのは、実にとてつもない相手…その黒幕は、この時代から四百年以上前の高麗太祖・王建。自らが建国した高麗が、李成桂により滅ぼされることを予知した王建は、歴史を変えるために、妖術により暗殺者を送り込んできたのでありました。

 …と、普通の読者であれば頭を抱えるようなこの展開も、荒山ファンであれば、既視感があるはず。そう、これこそ後に少年時代の伊藤博文に対して送り込まれることとなった朝鮮ターミネーター「処刑御史」の元祖。十世紀の宮廷妖術師・安巴堅(これもまた、ファンならお馴染みの名でしょう)により編み出された秘術により、はるばる時を超えてきたこの暗殺団は、しかし、その目的を達することなく壊滅し、ここで終わっていればまだ良かったのですが…

 まあ、荒山作品の権力者がここでおとなしくしているはずもない。怒り心頭に達した李成桂は、目には目をというわけで、今度は王建に暗殺部隊を送り込んだると息巻きます。奇しくも暗殺団の頭目の口を割らせたのは当代の安巴堅(この名は代々継承されるマジカルネームのようです)、その彼に、過去を遡る秘術の完成と、暗殺部隊結成の命が下されます。

 そこで安巴堅、死刑を待つばかりの凶悪犯ばかりを集めて暗殺部隊を結成しますが…あれ、この展開どこかで聞いたぞ? と思っていたらあに図らんや、秘術が完成し、まさに暗殺部隊が派遣されることとなったその寸前、諸般の事情で計画は中止。収まらないのは暗殺部隊の面々で――はいはいシルミドシルミド。
 ここまでも大概ですが、この後はいよいよもって意表を突く展開。そう来るか! と唖然とした後に、何ともほろ苦い笑いがこみ上げてくる、そんな結末の物語でありました。

 馬鹿馬鹿しい秘術と権力者の気紛れがきっかけで、事態が意外な方向に転がり、その中で歴史と人間の本質が、皮肉たっぷりに浮かび上がってくる、というのは山田風太郎の忍法帖短編の一つのスタイルですが、本作もそれとほぼ同様の味わい。単に奇想、特に奇想天外な秘術の存在をもってのみで、荒山徹を山田風太郎の後継とみなすのには私は反対なのですが、この一種の精神性とも言うべき部分において、まさに荒山先生は山風の後継と言ってよいかと思います。

 ただ――それまでのシルミド話だけでも十分にまとまっていただけに、クライマックスの亡国霊獣出現が亀…ならぬ蛇足に見えてしまったのが何とも残念なことではありました(しかし荒山先生、無生物に命を吹き込むネタが本当に好きだなあ)。
 これはこれで荒山先生の怪獣愛が暴発していて微笑ましいのですが…オチみたいに使うにはちょっともったいないネタだったかと思います(いや、オチにしないと収拾がつかなくなる怪物ではありますが)。


 それにしても――民族とか愛国ってのは何なんでしょうねえ。


「怪異高麗大亀獣」(荒山徹 「小説NON」2007年4月号掲載)


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