« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 そしてまた一人… | トップページ | 七月の時代伝奇アイテム発売スケジュール »

2007.06.13

「時代小説人物事典」 企画は面白いのだけれど…

 以前発売された「時代小説用語辞典」に続く形で発売されたこの「時代小説人物事典」。様々な時代小説の名作を、登場人物の観点から取り上げようという本書は、企画的には、なかなかユニークで興味深い試みかと思います。

 収録されているのは、江戸時代を舞台とした、古今の時代小説の名作ばかり。時代小説史上に冠たる大作から、誰もが名前を知っているようなヒーローもの、剣豪ものに捕物帳、人情ものにもちろん伝奇もの…ジャンルを問わず実在虚構を問わず、様々な人物が集められている様は、実に壮観であり、それだけでも楽しくなってしまいます。
 特に、あの人物のことがちょっと気になるんだけど気軽に前に戻ってチェックしなおすには…な超大作、例えば「大菩薩峠」や「富士に立つ影」などや、真面目に読んでいてもあまりの複雑さに混乱してくる「柳生武芸帳」のような作品を読むに当たっては、かなり助かる存在になりそうです。


 が…正直なところ、全体を通してみると、残念な部分も色々と目に付きます。
 その一つが、作品と人物のチョイス。例えば捕物帳などは、多くの場合見開き二ページの掲載なのですが、主人公をはじめとするレギュラー陣の紹介…はもちろん良いとして、一話限りのゲストなどが掲載されているのですが、そのチョイスがどうにも…果たして時代小説の登場人物について語る際に、彼らの名を挙げるべきなのかしらん(というのは該当の登場人物には非常に申し訳ない話ではありますが)、もっと他の作品の他の人物についてスペースを割く必要があるのではないのかしら、という気持ちになります。
 まあこれは、ページ数や作品傾向のバランス等、色々な縛りがあって、難しい事情もあるのだとは思いますが…

 それ以上に残念なのは、索引が今一つ親切でないこと。人物名で五十音に通して、というスタイルではなく、作品毎に人物名を挙げていくスタイルの本書では、有名人の場合、同じ人物が複数の作品に――すなわち、複数のページに――顔を出すことになります。
 この場合、ある人物がどの作品に登場しているかを簡単に知るためには、索引を使うのが自然かと思いますが…この人物名索引が、全作品通しの五十音順ではなく、作品毎の掲載となっているのに驚かされました。結局、ある人物を探すには、作品を最初から最後まで読み通す必要があるわけです。これが何とも不便で――

 これは私見ではありますが、時代小説の登場人物について書くということは、ある作品にどのような人物が登場しているか――そしてそれは、その作品がどのような内容であるかとほぼイコールかと思います――と、もう一つ、同じ人物が異なる作品でそれぞれどのように描かれているか、ということを書くということではないかと思います。
 それこそが、内容や時代背景に留まらず、登場人物という角度から作品を語る意義ではないかと思うのですが…

 もちろん、上記の通りこれはあくまでも私見であり、読む方によって印象は異なるかとは思いますが、個人的には、企画は面白いのですから、もう少しアプローチで頑張って欲しかったな…という気分です。


「時代小説人物事典」(歴史群像編集部編 学研) Amazon bk1


関連記事
 時代小説用語辞典

|

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 そしてまた一人… | トップページ | 七月の時代伝奇アイテム発売スケジュール »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/15412369

この記事へのトラックバック一覧です: 「時代小説人物事典」 企画は面白いのだけれど…:

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 そしてまた一人… | トップページ | 七月の時代伝奇アイテム発売スケジュール »