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2007.07.06

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 坊主凡て斃る

 申し訳ありませんが今日明日くらい五十選はお休みして連載ものを。
 さて前回、嘯竹坊・竜王坊・心華坊と次々と命を落とし、七人坊主も残すところ薬師坊ただ一人となってしまった「Y十M 柳生忍法帖」。このあまりに大きな犠牲の前に、涙するしかないお千絵お笛ですが、まだまだ残る敵は一行の元に迫ります。
 「沢庵さまはそなたたちに江戸へ行けと仰せられた…。そなたたちは江戸へ行かねばならん。わしたちはそなたたちを江戸へやらねばならん」と、美女二人の涙を背に、薬師坊も遂に死地へと足を踏み出します。

 すでに三分の一ほどに減じた芦名衆は血眼で一行を追いますが、その前に現れたのは、彼らにとって鬼より恐ろしい般若侠…何だかずいぶん福々しい般若ではありますが。
 これはおかしいと気付くだろう、普通…と一瞬思いましたが、よく考えてみれば、以前には太った般若、猿みたいな般若、片腕般若と色々やらかした連中がいるので、これくらいは違和感ないのでしょう…そうか?

 そんな茶々はさておき、恐怖感もあってか般若面に襲いかかる芦名衆。その槍を避けることなく般若面は受けて…芦名衆も驚くほどあっさり倒れた般若面の正体はもちろん薬師坊。合掌。
 そして薬師坊のあまりにあっけない死が思わぬ効果を生んだか、これが揺動作戦と思いこんだ芦名衆は、お千絵お笛が会津領外へと向かっているとも知らず、方向転換。…五人の坊さんの任務完了、と言うべきでしょうか。

 それにしても払われた犠牲は決して小さなものではありません。元より犠牲者、それも無辜の民の犠牲者は決して少なくはない本作。しかし彼ら五人、いや七人の坊さんは、確実な死に向かって、恐れも見せず、むしろ笑顔すら浮かべて飄然と歩みを進め、想像以上の戦果を上げました。
 一体何が彼らをここまで尽き動かしたのか――仏教者としての無私の愛、と言ってはそれまでかもしれませんが、それならば、彼らはいかなる高僧善知識も及ばぬことをしてのけた、と言えるかもしれません。

 ちなみにこの五人坊主散華の件、原作では、山風一流の筆になる煽り(?)があまりに見事で、何度読んでもこちらの体温が上がってくる名文中の名文。
 ここまで持ち上げておいて何ですが、さすがにそれに比べれば、こちらの方は相手が悪いという印象があります。この辺り、徹頭徹尾、作品の中にナレーションを入れない(これはこれでもちろん、大いに評価すべきであることは間違いありません)スタイルが足を引っ張った気がしないでもありませんが…と、これは原作ファンの贅沢か。

 さてラストでは、会津領からの脱出を図る女人たちを連れた十兵衛が登場。沢庵組、お千絵組に続く三つ目のパーティーの登場ですが…さて、剣の力だけでは超えられそうにない苦境を如何に超えたものでしょうか。

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