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2007.07.28

「織江緋之介見参 果断の太刀」 いまだ続く修羅の宿命

 上田秀人先生の剣豪伝奇アクション「織江緋之介見参」シリーズもいよいよ佳境。徳川第五代将軍の座を巡る激しい暗闘と、徳川に祟ると言われる名刀村正の連続盗難事件、さらには吉原の富に目を付けた幕閣の暗躍と、三つの事件に緋之介は立ち向かうこととなります。

 シリーズ第一作より緋之介と吉原の前に立ち塞がってきた宿敵・松平伊豆守は前の巻で退場したものの、まだまだ権力亡者たちは健在。いや、巨大な力を持った伊豆守が消えたことにより、歯止めの利かなくなったその魔手に立ち向かえるのは、一人緋之介のみ…というわけで、まだまだ彼が修羅の宿命から逃れることは叶わないようです。

 もちろん、緋之介とて独りで戦っているわけではなく、まだまだ人生経験に乏しい彼を支える人々があっての戦いではあります。そんな中で今回(も)最も輝いていたのは、緋之介の父である小野忠常と、その叔父・小野忠也という両剣豪でしょう。父・忠常は、命のやりとりでは既に緋之介に一歩譲るものの、人間としての貫目はまだまだ遙かに上。どこかの兵法指南役と違い過分の栄達を好まず、己の役目に忠実に生きる中で時折見せる剣士としての凄みは大人の男として実に魅力的であります。
 一方の忠也は、いまだに剣力では緋之介の遙か上を行く、おっかなくも頼もしい大剣士。これまで数限りなく人を斬りながらも、外道に堕ちず剣士の道を全うせんとする忠也は、忠常とはまた別の意味で、大人の男として緋之介を導いていくこととなります。

 そして、そんな中で少しずつ成長してきた緋之介を待ち受けるのは、松平伊豆守の死以上に本シリーズにおける大きな意味を持つ出来事。ここで彼が行った選択の重みは、シリーズ当初から彼の生きざまを見守ってきた者にしてみれば、実に大きく、シリーズも結末に近づいてきたかと思わされます。

 が、それでもまだまだ終わらぬ緋之介の戦い。ある意味シリーズ最大の舞台で繰り広げられた死闘を潜り抜けた先でも、未だ全ての真実は明らかにならず――要するに、次の巻へのヒキで終わっているのですが、これがまた実にいいところで切れているのだからたまらない。
 一刻も早く次の巻を! と心からの叫びを上げたくなってしまう私は、まんまと作者の手の上で踊らされていますが、それもまたよしと思える快作でありました。


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