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2007.08.01

「X天 [ばってん]」第一巻 見参、異形の付け馬ヒーロー?

 江戸時代の吉原を舞台に、付け馬を主人公にした珍しい漫画が、「モーニング2」誌で連載されているこの「X天 [ばってん]」。
 付け馬、あるいは付き馬というのは、吉原などで遊んだ後に代金を支払えない客に付いていき、金を取り立てる人間・職業のこと。小説・TV時代劇では南原幹雄先生の「付き馬屋おえん」シリーズがありますが、漫画の世界ではなかなかお目にかかれないキャラクターではないかと思います。しかもそれが途方もなく強い女装の大男とくれば…

 主人公・椿清十郎は、元は武士ですが、いかなる事情によってか刀を捨て、いまは吉原で付け馬稼業――そして何故か女装でしかも片肌脱ぎ。普段は脳天気な遊び人体の人物ですが、いざ付け馬の仕事となれば、相手が何者であろうと真っ正面から渡り合う度胸と腕っ節を持つ好男子であります。
 そんな彼が、吉原を巡る様々な事件、人間模様に巻き込まれて繰り広げる騒動を、連作短編スタイルで描いた本作ですが、作者が少年漫画出身ということもあってか、全体を通してのノリはかなりコミカル。キャラ立てや、特にアクションシーンなどは、いかにも「マガジンの少年漫画」的なテイストとなっています。
 ちなみにこの第一巻のオビに推薦の言葉を寄せているのは、綾峰欄人氏と上条明峰氏。綾峰氏の作品は読んだことありませんが(噂はかねがね…)上条先生といえば、このサイト的には「SAMURAI DEEPER KYO」の作者であって、これだけでいろんな意味で本作に注目しないわけにはいきません。というより本作を読むことになった二番目のきっかけ(一番目は後述)はこの点であります<さすがにそれはどうかと思う

 実際のところ、時代考証という観点からすると、色々とどうなんでしょう、というところも(結構大事なところで)ありますし、そもそも毎回の付け馬の解説で「要はイヤガラセである」というのはいかがなものか――確かに間違ってはいない面もありますが――とも思いますが、こうした作品でそれを言うのは野暮というものでしょう。主人公をはじめとする登場人物のキャラクターはなかなかユニークですし、ギャグの切れ味も良好(特に第一話のクライマックスには噴き出したなあ)。アクションは、まあこういうテイストということで。
 何よりも舞台設定的にはもっと色々とドロドロとした、重い話になりかねない話を、あえてそこまで踏み込まず、そして主人公の活躍により踏み込ませずに、躍動感のある「イイ話」的にまとめているのは好感が持てますし、こういう時代漫画があっても全然OKでしょう。

 まだまだ発展途上の作品・作者かもしれませんが、今後の展開も期待できそうです。第二巻では主人公の過去も描かれるようなので、おそらくは相当重くなるであろうドラマをいかに転がしていくのか、楽しみに待つこととします。


 ちなみに本作については、まことに恥ずかしながらつい最近まで存在を知らなかったのですが、Web拍手にて情報をいただきました。遅ればせながらここにお礼申し上げます。


「X天 [ばってん]」第一巻(安宅十也 講談社モーニングKC) Amazon

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