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2007.08.02

「大江戸ロケット」 拾七発目「黎明の殺し節」

 衝撃のおソラさん正体バレから引き続く今回の「大江戸ロケット」、いかにもこの作品らしくギャグとボケで笑い飛ばしてめでたしめでたし…とはさすがにいかず、何ともドシリアスで重~い展開に。さらに銀さんまで正体がバレ、清吉はお尋ね者にと、番組始まって以来の暗黒時代到来であります。

 赤井や黒衣衆から庇ったものの、その清吉からは恐れられ、疎ましがられるおソラさん獣フォーム。舞台の方のプレデターの着ぐるみみたいなのに比べれば、こちらは随分マシなのに…モフモフできそうだし。というのはこちらの勝手な感想で、血吸いの怪物と思いこんでいればこれもまあ仕方のない話かもしれません。
 さらに職人トリオにボコられるおソラさんですが、それよりも何よりも(見ている側にとっても)キツいのは、源蔵のお母さんの「人様の命を奪うなんて…そんな恐ろしいこと、どうしてしたの?」という言葉ではないでしょうか。おかん口調なだけにこれは厳しい。そしてそんな中でただ一人、人ならぬおソラさんの身を気遣ってくれたおぬいちゃんは本当に良い娘だ…(ここでおぬいまでおソラを責めたら人間不信になるところですぜ)

 そこにディバイディング鍵十手で青い女を片づけた(分裂能力が暴走したので、既に能力は失ったかと勝手に思いこんでいましたが、変身も再生も普通にしてましたね)銀次郎が駆けつけますが、こちらまで正体がバレてしまって状況はますます悪化。ほとんど駆け落ちまがいの台詞でおソラさんと逃げようとする銀次郎ですが、そこに現れた鳥居の銃弾がおソラさんを貫き(ショックで中途半端に変身してしまったおソラさんの姿が、実に衝撃的であります。スタッフの鬼!)、銀さんもやむなく皆の前で鳥居に膝を屈することに…

 命知らずの長屋の皆さんの文字通り「必殺」技のおかげで清吉はその場を逃れたものの、状況は絶望的。遠山様も更迭同様で、途方に暮れた天鳳は、銀さんに頼ろうとしますが、しかしつらいのは銀さんも同じ…いやそれ以上。
「何でもかんでも俺に頼るなっ! …もう勘弁してくれ」
と舞台でも実に印象的だった名台詞を思わず吐いて、一人去っていくのでありました。…このシーン、原作舞台での古田新太の、飄々としていた中に押し込められていたものが爆発するような口調も良かったのですが、このアニメでの山寺宏一一流の切なさがこもった口調もまた良し。本当に舞台といいアニメといい、銀さんは恵まれたキャラです。

 そして辛くも逃れた清吉は、作業小屋で一人呆然。そこに現れた青い獣に襲われて初めて、おソラさんの潔白を悟るものの、獣を撃退するために小屋もろとも爆発させて、これまでの成果もすべておじゃんに。
 最愛の女性を失い、生き甲斐の仕事を失い、おまけに官憲に追われる身となり、およそ男としてドン底に落ちた清吉は飛鳥山でぼんやりと土器(かわらけ)投げをするしかなく――

 ちなみに、この土器投げ(瓦投げだとちょっと前の必殺攻撃と一緒になってしまうのでこちらの表記としてます)は、花見の際などに高いところから願い事を込めて(書いて)素焼きの皿などを投げた遊びとのこと。現在ではさすがに飛鳥山ではこの遊びはできませんが、近所ではこれにちなんで「かわらけせんべい」なるものも売っているとか。
 閑話休題、土器を買い占めて自棄投げしていた清吉ですが、それを横から土器を投げつけて次々と撃ち落としていく奴が――誰だ? と思えばそれは銀次郎でありました。

 普段の優しい兄貴ぶりとはうってかわった憎々しげな口調で、厳しい言葉をぶつけてくる銀次郎。それに対して一歩も引かずに言い返す中で、清吉は自分の中の気持ちに正直に向き合います。そう、清吉が月まで届く花火を造っていたのは、江戸のみんなの顔を上に向けさせるためではなく、ただただおソラさんのため。どんなに銀さんに挑発されようと、何を見ようと、おソラさんを信じる想い、おソラさんへの想いは揺らぐことはない――

 いやもうね、恥ずかしい話ですがこのシーン、この番組を見ていてほとんど初めて涙が出てきました。自分だってどうしたらよいのか八方塞がりの中、清吉を奮起させるためにあえて悪役を買って出る銀さんの侠気が、もう胸にグッと来たのなんの…
 これがまた、土器投げというこの時代でしか成り立たないシチュエーションを通して、清吉と銀次郎、二人の男が気持ちをぶつけ合う様を描いてみせるのだからたまらない。正直なところ、前回と今回で溜まったもやもやした気持ちが一気に吹っ飛びました。

 そして完全に立ち直った清吉は、追ってきた赤井たちを一蹴して長屋の連中と合流。銀さん曰く明日の朝には終わりというおソラさんを救うため、奪還を宣言して以下次回。


 ――と、思ったよりも早い清吉の立ち直りですが、今回のような男泣きシチュエーションでやってくれたのであればもう文句はありません。
 今回は、前半部分はほぼ舞台と同じ、シチュエーション・台詞を使って(が、屋根の上での耳の台詞が、舞台と同じものなのにシチュエーションの違いで全く正反対の意味に聞こえてくるのが素晴らしい)おソラ・銀さんと清吉をはじめとする長屋の面々の断絶を描いた一方で、飛鳥山を舞台とした後半部分はアニメオリジナル。これまでのエピソードでもそうでしたが、原作舞台のシチュエーション・ネタを巧みに取り込み、イベントの順序の異同はあるもののほぼ原作通りに展開しつつ、アニメとしてオリジナリティを見せるべきところではビシッと決めてみせる、本作の魅力が遺憾なく発揮されていたかと思います。

 さて次回予告では、今回全く姿を見かけなかった(…よな? 真剣に存在を忘れていました)源蔵鳩が、見覚えのある動物たちのもとへ――おお、ここで鉄十が助っ人に来るという展開か!? 確かに鉄十のとこだったら幕府の手も及ばなそうだし、ロケット開発の設備もあるし、うってつけかもしれません。風魔流忍拳くらいは使えるだろうから(無茶言うな)戦力的には問題ないしな! というか橋本じゅんさん分が不足しているので早く補充して下さい。頼むよ!


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