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2007.08.07

「怪異いかさま博覧亭」 面白さは本物の妖怪コメディ

 お江戸は両国の見世物小屋を舞台に、人間たちと妖怪変化が織りなす妖怪ドタバタ人情コメディが、この「怪異いかさま博覧亭」。
 恥ずかしながら雑誌連載時はノーチェックでしたが、こうして単行本第一巻がまとまったところで読んでみればこれが実に私好みの面白さ。もっと早く読んでいれば良かった…と心から思います。

 舞台となるのは、江戸一の娯楽の町・両国の見世物小屋・博覧亭。しょーもない見世物ばかりで閑古鳥が鳴くこの小屋の若き主人・榊を中心に、番頭の少年・柏、家事担当の少女・蓬、ある事件がきっかけで転がり込んできた忍び娘・八手、そして榊の幼なじみで腐れ縁の貧乏絵師・蓮花といった面々が織りなすドタバタというのが基本的展開ですが、そこに絡んでくるのが「妖怪」だからまた話は(もちろん良い意味で)ややこしくなります。

 何せ主人公の榊からして、何か面白い妖怪ネタがあると、趣味と実益を兼ねて飛び出していく大の妖怪馬鹿というキャラクター(なんという感情移入しやすいキャラ…って私だけ!?)。一攫千金を夢見て様々に手を尽くしますが、寄ってくるのは妖怪変化でもどこかズレた連中ばかりで、結局くたびれもうけ…というのはこの手の話にはお約束ですが、榊が純粋に妖怪好きなのがヒシヒシと伝わってくるだけに、いやみなく素直に悪戦苦闘を楽しむことができます。
 ちなみにその榊と共に暮らす柏は実は算盤小僧、蓬はろくろ首、さらに榊の着る羽織は小袖の手と、わざわざ探さなくとも身の回りには妖怪だらけ。しかし彼は人間が出来ているのか単に抜けているのか、自分の目の前にいる妖怪は妖怪扱いしないでスルーしてしまうのがこれまたお約束。

 と、そんな連中が集まってのお話は、どのエピソードもテンポの良いギャグの連打で、ついつい一気読みさせられてしまいます。実は作者の小竹田貴弘氏の作品は、某ジュヴナイル伝奇のアンソロジーコミックで以前から読んでいて、そのギャグの切れ味にいつも感心していたのですが、そのセンスはオリジナルである本作でも健在であります。
 もっとも、本作のウリ(?)の一つである江戸豆知識の描写が、このギャグテンポを損なっている面がなきにしもあらずで、思わぬところで時代ギャグの難しさを見た気分…もっとも、この点は回を追うごとにこなれていっているので、必要以上に気にすることはないのでしょうが。

 ちなみに個人的に印象に残ったエピソードは、そのギャグが比較的抑えめだった第六話。舞台を過去に移して、ろくろ首少女の蓬が博覧亭にやってくる顛末を描いたこのエピソードは、育ての親に虐待される蓬に対する榊の優しさを描いて、人情話として出色の出来。冷静に考えれば、ろくろ首の少女を見世物小屋の人間が買いに来るというのはネタ的にナニではありますが、その辺りをうまく回避した物語構成はなかなかうまいものだと思いますし、何よりも、親が彼女を虐待しつつも手放そうとしない理由というのが、妖怪ものとして実に秀逸で、大いに感心いたしました。

 何はともあれ、妖怪好き、ギャグ漫画好きであれば読んでみてまず損はない本作、タイトルこそ「いかさま」ですが、面白さは本物ですよ、と、ベタなオチで恐縮ですが、真面目にお勧めいたします。


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