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2007.08.06

「モノノ怪」 第四話「海坊主 二ノ幕」

 先週より始まった「海坊主」、全三幕の二ノ幕。乗客の一人一人に「恐ろしいものは何か?」と問いかけるアヤカシ・海座頭の出現により、乗客の心底が暴かれていくこととなる展開で、動き的には地味でしたが、各キャラクターそれぞれの心理描写が面白く、なかなか見応えのある回でした。

 さて、まんざら幻殃斉の口からでまかせでもなく本当に存在していた魔境・龍の三角。船の羅針盤に何者かが行った細工を抜きにしても、アヤカシの集うこの海域に、薬売りは退魔の剣の導きで連れてこられたと語りますが、しかしそれはアヤカシ退治のためではなく、モノノケを斬るため。前回も少し触れられていた通り、本作においてはアヤカシとモノノケはまた別の存在とのことですが――これは色々とややこしいようですが、千差万別の起源を持ち、人とは異なる理を持って動くこの世ならざるものがアヤカシ。そしてそのアヤカシと激しい人の負の情念がアヤカシと結びついたモノがモノノケ、と考えれば良いのでしょうか。

 などと話していたところに現れたのはアヤカシ・海座頭。この海座頭、怪優・若本規夫が声を当てるだけあって無闇な迫力(しかしこの海座頭、いわゆる魚人という奴ですが、これまでの半漁人の常識を覆すような(?)ユニークなデザインでちょっと感心)で、「うぉまえがうぉそろしいことわぁ…ぬわんだあぁぁぁ!」と、相手の恐ろしいものを問うて答えさせては、それを幻影にして見せるという、ちょっとどころではなくイヤな能力を持っている様子。
 その問いに対し、財を失い一文無しになることを恐れた三國屋は、虎の子の金魚を口から吐き出して色々な意味のショックでダウンし、怖いものなどないと答えた佐々木は、今まで辻斬りなどで斬殺してきた者たちの怨霊に飲み込まれて半狂乱に。そして加世は…もの凄い勢いで乙女の夢を語った末に、突然妊娠し、立ったまま魚人の胎児を産み落とすというグロテスク極まりない幻覚を見せられて狂乱…するところを薬売りに抱き留められて何とか回復(この時の妙にエロい薬売りの仕草が面白いんですが、これは何かしら術を使ったのかもしれませんな。また幻殃斉は「饅頭怖い」とベタなことを答えた挙げ句…何を見せられたかはわかりませんが、まあこれも大変な目にあった模様です。…しかし、他の人間に比べると答え方を自制できたこの人は、見かけよりもしっかりとした人間なのかもしれません。

 そして真打ち、薬売りの答えは…「この世の果てには形も真も理もない世界が、ただ存在しているということを知るのが怖い」という意味深なもの。その答えを受けて見せられた幻覚では、己が虚無に浸食されてただ消えていく様を見せられますが、さすがは薬売り、他の者のように取り乱しはしませんでした(が、現実に戻ったときに拳を握っていたところを見るに、やはりなかなかキツい体験だった様子)。
 この薬売りの答えには色々と解釈があるかと思いますが、どのようなモノノケであっても形と真と理さえあれば粉砕する退魔の剣を持つ薬売りにとって、その三つが存在しない世界というのは、それは確かに厄介極まりないものでしょう。更に言えば、それはおそらく彼の存在意義であろうモノノケ退治を不可能とするものであって…ちと大げさに言えば、まさに彼にとっては存在の根幹に関わる恐怖なのかもしれません。

 閑話休題、残る菖源と源慧のうち、菖源は自分の師である源慧が恐ろしいと答えます。そんなにアブノーマルなことを強要させられたのか… 源慧の不審な態度に不信感を抱いていたた菖源は、羅針盤に細工できたのは源慧のみと答え、そしてその源慧の答え――この五十年間彼が恐れてきたもの、それはこの海にあり、漂い続けこの海を魔境に変化させたモノ…五十年前に彼の妹が乗って流されたうつろ舟でありました。
 そしてその言葉こそは薬売りが望んだもの。食わせ物揃いのこの船の真を暴くために、海座頭の力を利用したということなのでしょう。アヤカシまで利用して事件を暴こうとは、やっぱりこの人は一枚上手でした。…巻き込まれた周囲の人はたまらんですがな。

 と、ここで登場したうつろ舟。ゲーゲーやってても不屈の解説魂に燃える幻殃斉は、大木をくり抜いて作られた、一度乗ったら出られない舟と解説します。
 実際の書物等で言えば、「平家物語」では源三位頼政に倒された鵺をこれに入れて海に流したという記載があります(あれ、そう言えば「モノノ怪」にも「鵺」のエピソードが…)。もっとも、それ系の方面では圧倒的に有名なのは、曲亭馬琴の「兎園小説」に登場した虚舟のエピソードかと思いますが、流すにしろ流れてくるにしろ、常ならざるモノが乗せられた舟ということに間違いはないようです。
 そして源慧の言葉に応えるかのように異界と化した船の中から現れたモノ、五十年前に海に消えたはずのうつろ舟の中から、「カリ、カリ…」と、何かをひっかくような、何ともご勘弁いただきたいようなホラーな音が聞こえてきたところで、次回に続く。


 さて、源慧曰く、このうつろ舟には、妹が彼の身代わりとして自ら乗り、流されたと事件の真相に近づく発言をしたものの、それが源慧にとってだけの真ではなく皆にとっての真であるかどうか、まだわからないというのは「化猫」を観た者であれば皆知っていること。おそらくはまた、おぞましくも哀しい真が待っているのでしょう…
 どうも作画的には色々と厳しいようですが、次回大詰めでどのようなドラマとアクションが待っているか――小中千昭氏が脚本を書き、古橋一浩氏が絵コンテを切っている以上、なまなかなものが出てくるわけがありません。大いに期待して次回を待ちます。


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