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2007.08.22

「大江戸ロケット」 二十発目「難儀に微笑む女」

 いよいよ青い獣との対決も大詰めの「大江戸ロケット」。第二十話の今回は、さすがにギャグもパロディも抑え目、しかし作画は結構な力を入れて終シリアスにストーリーが展開し、意外な形で一つの決着を迎えることとなります。

 ついに浮上した巨大宇宙船を巡る戦いは、三つ巴、卍巴と大混戦。それぞれの使命、それぞれの想い、それぞれの因縁が幾重にも絡み合って、実に見応えのあるドラマとなっていたのですが、存在自体がウザい(そこまで言ってない)鉄十はアバンタイトルで強制退場…(´Д⊂ おソラなめんな。
 それはともかく、銀次郎により自分の心の鍵を開けられたと嘯く赤井(ここで「徳川(とくせん)」とちゃんと言っているのは、当たり前といえば当たり前ですが好印象)の前に、あっけないほど簡単に敗れ去った銀次郎。やはり心の中、自分で自分に嘘をついている人間は、自分(の欲望)に正直な人間には勝てないのか…勝って欲しいんだけどなあ。何とか黒衣衆と清吉に助けられて彼らと和解、一気…じゃなかった一揆コールで薬も飲んで復活、久々の黒衣衆ファイト一発! で先に宇宙船に突入したおソラと青い女を追います。

 その二人は、一時休戦して青い獣分離体を追い詰めますが、ここでわかったのはこの分離体が、青い女の帰りたいという気持ちから生まれたものだということ。青い女の、帰りたくないという気持ち(≒赤井と共にいたいという気持ち)と、故郷に帰りたいという、文字通り引き裂かれた想いが生み出した存在…今回のこの分裂は意図せざるものでしたが、青い女はこれまでもこの「心の分裂」を行ってきたらしく、それが彼女たちの母星では大罪であったということが語られます。
 正直なところ、心を分裂させることが永久禁固に値する大罪、という考え方はよくわからないのが困ったものですが、まあ心を分裂させると体も勝手に分裂するのであればそれはそれで迷惑…なのかなあ。あ、もしかしてピッコロ大魔王と神様みたいなものなのか。これは確かに迷惑だ。
 …閑話休題、以前青い女が「楽しい」という感情を単純でくだらないこと、というように評していましたが、元々は彼女たちは相当複雑な思考形態を持つ生物なのかもしれません。おソラさんを見ているとそうは思えなかったりしますが…

 一方、状況は戦いの継続を望む眼の思わぬ乱入もあって、船のコントロールルームへ。あくまでも帰還を望む分離体は、鉄十の竜勢を飲み込んで自分の腕をロケットランチャー状態に変形、その攻撃から赤井を庇った青い女は瀕死の重傷を…そして青い女が自爆装置を起動させたことを知ったソラは清吉銀次郎と共に脱出、残された赤井と青い女は、二人だけで最期の時間を迎えることとなります。
 ああ、何だかズォーダー大帝の超巨大戦艦に特攻しそうな感じだねえ…とか爺臭い感想はさておき、青い女の心が、母星への帰還以上に自分と共にあることを望んでいることを知った後の赤井の穏やかな表情が、何とも印象的で――それまでつまらない人生を送ってきた、いや、自分の心の中で自分の人生をつまらないと思いこんできた男がようやく手にした幸福感、心の充足だったのでしょう。
 そして、青い女を「ゆう」と呼ぶ赤井。夕日は西に沈む、夕日は赤い…赤井西之介が男を見せた時ですが、幸せは一時。赤井はゆうにより船外に脱出させられてしまうのでありました。

 その直後、様々な想いを飲み込んで爆発する宇宙船。清吉とおソラは、手に手を取り合って宙を舞う一方で、己は一人地べたに落下という、これ以上はない美しいビジュアルで失恋する銀次郎が拙なすぎます。そのショックから銀さんは一人旅の空へ…残されたお伊勢さんは何を想う。
 と、銀さんは可哀想ですが、江戸に残った面々は、本当にうまくいきすぎて気味が悪いくらいのハッピーエンド。清吉が所払になるだけで、他は一切お咎めなし。所払と言うと重そうですが、これは幕府の公事方御定書に定められた六段階の追放刑の中でも最低ランク、住んでいる所から追い出されるだけですし(もっとも人別を消されていると無宿人になってしまうわけですが…あ、ここでは浮民と言った方がいいのかしら)、石川島に作業場も用意されたらしく、至れり尽くせりです。

 そして慌ただしくも希望に満ちた新しい一歩を踏み出した清吉とおソラですが、清吉はおソラに白い獣の姿を見せて欲しいと頼みます。何だかこの白い獣の姿となったおソラさんは、羞じらっているようで、何というか、こう、妙にエロい演出だったのですが、これは考えてみれば好きな男の子の前で、生まれたままの姿を晒しているのだから無理もない話でしょう。しかしまあ、清吉もすっかり赤井のことをどうこう言えない獣萌えに…
 と、この場合男(地球人)の方はどうでもいいのですが、ちょっと心配なのはおソラさんの方。この調子でいくと、彼女もゆうのことをどうこう言えない状況になってしまうのではないか、心配になってきます。
 劇中でも言われている通り、己の本音と建て前――とまで極端ではないものの、己の中に相反する心を持つというのは、少なくとも我々人間にとってみれば当たり前の話。もちろん、日々の生活を送る上では、そうした複数の心の折り合いをどこかでつけなくてはいけないわけですが、それがそうそううまくいったら苦労はないし、もしそんなことをみんなが出来るようになったら、たぶん世の中から文化芸術というものの大半は消えてなくなるのではないかなあ…宇宙人をロケットに乗せて帰す話が、ずいぶんと面白い方向に向かってきたものです。

 さて残すは六話。多いような少ないような、微妙な話数ですが、青い女と鳥居様という二大障害がなくなった今、むしろやることがあるのか…という気がしないでもありませんが、本題であるロケット開発に加えて、まだまだ問題は山積。銀さんもあのままでは追われないでしょうし(何となく、銀さんの大坂でのエピソードが入るような気が)、分裂体に取り込まれたように見える眼の存在も不気味。粘着気質では誰にも負けない鳥居様もこれくらいで黙るとは思えませんし、何よりも、生き残ってしまった赤井の行く末が気にかかります。
 こう挙げてみれば、退屈している余裕はなさそうですね。そして最終回までに源蔵と鉄十の活躍はあるのか…


 しかしあれだけのサイズの宇宙船が爆発したら、月の基地の方から何か言ってこないかしら。あ、そういえば舞台版のラスト…

 も一つ。ラストに出てきたピンクがゆうの魂ってことは…ないよねえ(本当にそうだったら泣けます。良い意味で)。


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