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2007.08.04

「TITLE」誌の時代小説特集をひねくれつつ楽しむ

 文藝春秋社の「TITLE」誌の最新号に「ビジネスに効く時代小説 全203冊」という特集が掲載されていると知り読んでみました。
 いきなりで恐縮ですが、私は時代小説をビジネスに役立てようという考え方がどうにも好きになれないのですが(もちろん役立てても構わないのですが、どうもそういう考え方の裏には「役に立たない本、意味のないものはダメ」的な思想があるような気がして…)そういうひねくれた根性を抜きにして読めば、様々な切り口で時代小説の魅力に迫った、かなり面白い特集であると思います。

 冒頭の「経営者・指揮官が明かす「成功する」時代小説」という記事こそ、ケッという印象でしたが(器が小さすぎるよ三田さん…)、百ページ近い特集の中には、そうした定番の記事にとどまらず、「藤沢周平でめぐる山形・庄内の旅」や、「時代小説から読み解く、江戸の町のビジネスマップ」(この企画面白いなあ、うちでも真似したいなあ…と思ったら時代小説SHOWさんの記事でした)といった、なかなかユニークな、それこそビジネスマンや時代小説ファン以外の人でも楽しめそうな記事が用意されていて、素直に、そして大いに楽しんでしまいました。

 そして何よりも、末國善己氏による「組織」「名君」「商売」「職人」「改革」「戦国」「経済」「幕末」「隠居」「家族」という十テーマ×十冊のキーワード別の時代小説ガイドがやはり出色の出来。ある意味これを目当てに読んだようなものではありますが、ビギナーの方でも十分楽しめる内容は期待通りのクオリティで、さすがは…と素直に感心いたしました。タイトルこそ「ビジネス力を鍛える天下無双の時代小説案内」ですが、ビジネスという観点からはもちろん、それを抜きにしても十分以上に面白い記事です(そうか、キーワード別の小説ガイドってのも面白いな…)

 この「TITLE」誌は、「都市型ライフスタイルを提案するワンテーママガジン」とのことですが、このようなちょっとオサレ目のスタンスからの、そして小説誌や書籍情報誌とはまた違う色々な切り口での時代小説特集は、普段時代ものの世界にどっぷり嵌っている私のような人間にとっても、いやそんな奴だからこそなかなか新鮮で、魅力的に映りました。
 ビジネスと時代小説といえば、冒頭の私のタワゴトのようにネガティブなイメージを持つ方もいるのではないかなとも思いますが、その辺りはうまくかわして――もちろんメインテーマからは大きく外れず――きちんと読ませるものになっているのには感心した次第です。
 オールカラーの割には驚くくらい定価も安いので、まずは買ってみても損はないのではないかなと思います。


 …そして個人的には、やはり広い読者層を相手にした記事を読むのは勉強になるなあと変なところで感心しました。


「TITLE」2007年9月号(文藝春秋) Amazon

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コメント

はじめまして、たぬきと申します。
書評のブログをチェックしていて、こちらを見掛けました。
時代小説のガイドとして、時々覗かせていただいています。

TITLE、面白そうな内容ですね。
早速Amazonに注文をしてしまいました。
情報に感謝です。

私も時代小説が「ビジネスに効く」というのには、かなり疑問をもっている一人です。
ですが、男性が歴史上の人物に憧れてそのように生きたいという姿勢にはかなり憧れます。
巷に一本筋のとおった格好良い男性が溢れてくれたら、嬉しいなと本気で思った次第です(笑)

投稿: たぬき | 2007.08.04 17:02

たぬき様はじめまして。
これまでもご覧いただいているとのこと、どうもありがとうございます。

確かに、何かに役立てようというのと、何かに憧れて目標にしたいというのは別ものですね。
しかし僕の憧れる時代小説キャラは「若さま侍」…うわっ、こりゃ駄目だ

どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 三田主水 | 2007.08.05 21:21

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