« 「ガゴゼ」第三巻 彼は一体何者なのか | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 沢庵和尚打つ手なし? »

2007.09.10

「大江戸ロケット」 廿三発目「剣舞に花火をどうぞ」

 いよいよ今回を含めて残り四話となった「大江戸ロケット」ですが、今回はいよいよ銀次郎主役話。以前、一話くらい銀次郎復活に向けて、大坂での過去絡みのエピソードがあるのではないかと予想していたのですが、何とそれを描くのは原作舞台の脚本家でもある中島かずき氏という嬉しいサプライズであります(ちなみにタイトルの元ネタは「必殺からくり人」…本作と同じく、天保を舞台としたアウトローたちの物語であります)

 あてどなく旅を続けるうちに世直し義賊の銀狐仮面と夜桜頭巾の噂を聞く銀次郎。心中穏やかでない中、彼が出会ったのは、かつて大塩の配下であった美作天兵衛でした。乱の中で大筒の暴発に巻き込まれたために失明して、今は平穏に暮らしているはずの天兵衛の周囲に、銀次郎は何やら不穏な空気を感じて彼から離れますが…
 一方、江戸ではお伊勢さんが今は大目付の金さんに呼び出され命ぜられたのは、最近京大坂を中心に火薬を狙って活動する盗賊団・夜狐党の探索。仕方なしに探索を引き受けたお伊勢さんは、天鳳と、何故か鉄十と共に大坂に向かうことになります。
 そして一味を誘き出すため、囮の火薬を運ぶお伊勢一行の前に現れた夜狐党、鉄十が色々やらかしてややこしいことにもなりかねましたが、何とかその懐に飛び込んでみれば、その頭目はあの天兵衛――

 琵琶湖のほとりに大船団をしつらえた天兵衛の狙いは、大塩の乱の再来、今度は大坂でなく、ロケット打上げの騒ぎに乗じて江戸を焼き払おうという野望に天兵衛は燃えていたのでありました。既にお伊勢たちの狙いを見抜いていた天兵衛により窮地に追い込まれる三人を救ったのは、「あっしには関わりがねぇこって」と去ったはずの銀次郎!
 お伊勢と天鳳に船団を任せ、自分は爆発した火薬の黒煙の中、天兵衛と対峙する銀次郎ですが、馴れぬ闇の中で苦戦。そんな彼の窮地を救ったのは、火薬と見ると黙っちゃいられない鉄十が作って打ち上げた花火の輝きでありました。
 大義に賭けた己の夢を見失い復讐という我欲に凝り固まってしまった天兵衛を倒し、間接的に清吉たちの夢を守った銀次郎ですが、さて彼の夢は――

 と、期待通り実に渋いストーリーだった今回ですが、やはり目を引くのは今回のゲストキャラ・天兵衛の存在。かつては大塩に心酔し、銀次郎らと同志の絆で結ばれながら、挫折して復讐のために江戸の町を炎で包もうとする彼は、一歩間違えれば銀次郎もそうなっていたかもしれない銀次郎のネガとも言える存在であり、今回は、銀次郎の自分自身との対決という側面があったと言えるのではないでしょうか。
 現実に目を閉ざしたのみならず、己の行くべき道から目を逸らして外道に踏み込み、いわば心の目を閉ざしてしまった天兵衛。銀次郎もまた一度は現実に絶望し、顔を焼く寸前までいったわけですが、しかし彼が正道に踏みとどまることができたのは、清吉の花火の輝きを天に見たからというドラマ設計は実にうまいと思いますし、そして再び花火に銀次郎が救われる(=二人の道が分かたれる)というのも、お見事と言うほかありません。
 ちなみにこの天兵衛を演じたのは小山力也氏。銀次郎役の山寺宏一氏との対決は、共に大人の男を演じさせたら業界屈指の名優同士の実に濃いぶつかり合いだったのですが、マニア的にはこの二人と言えば、本作と同じマッドハウス制作の時代劇アクション「獣兵衛忍風帖」「同 龍宝玉篇」でそれぞれ主人公の牙神獣兵衛を演じたのを思い起こさずにはいられないわけで――新旧牙神獣兵衛対決というシチュエーションには密かに燃えてしまいました。

 そして、シリアスなだけでなく、例によって例の如くのギャグとパロディのつるべ打ちももちろん健在。ミラクルボイスや海老車などという一体どの層を相手にしているのかわからなくなるようなオールドネタから、獣拳合体にカミナのアニキといった最新のネタ(というかセルフパロ)、果てはニコ動実況ネタなど、一瞬たりとも油断のできないテンションの高さは、これは本作独特のノリ…というよりやっぱり中島かずき節じゃないかなあと、新感線ファンとしては思います(個人的には天鳳がTVを飲み込んだ時の「果心居士かい」「手妻手妻」という会話が、ネタの濃さといい会話のテンポといい大好きでした)。
 そしても一つ、個人的にたまらなかったのは鉄十の大暴れで――さすがに中島脚本を演じることにかけては間違いなく本作では一番馴れている人が演じているだけのことはある、まさに水を得た魚のような暴走ぶりにはひっくり返って笑わせていただきました。「タヌキサイコー」な獣の拳もヒドかった(褒め言葉)ですが、個人的にはあの千葉ちゃん写しの息吹きを見ることができただけでもう…


 それはさておき、どうやら己の成すべきことに向き合おうとする姿が見えてきたような気がする銀さん。まだまだ迷いや悩みは多そうですが、人間、自分に夢がなくても人の夢を守ることだって立派なことだと思います。というかあと三話なんだから急いで戻らないと出番がなくなっちゃうって!
 銀さんのみならず、あとわずかな時間のうちに登場人物それぞれに何が待ち受けているか、そして物語そのものの行方は、と気になることばかりですが、おそらく残り三話、一気呵成に物語が展開することでしょう。…え、次回でおしまい!?(んなまさか)


関連記事
 今週の大江戸ロケット


関連サイト
 公式サイト
 公式ブログ

|

« 「ガゴゼ」第三巻 彼は一体何者なのか | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 沢庵和尚打つ手なし? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/16399918

この記事へのトラックバック一覧です: 「大江戸ロケット」 廿三発目「剣舞に花火をどうぞ」:

» 「大江戸ロケット」レビュー [アニメレビュー トラックバックセンター]
アニメ「大江戸ロケット」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *キャラクター(声優):玉屋清吉(沢海陽子)、ソラ(藤村知可)、銀次郎(山寺宏一)、お伊勢(朴ろ美)、駿平(釘宮理恵)、赤井西之介(川島得愛)、天鳳(早水リサ)、天天(てらそまま..... [続きを読む]

受信: 2007.09.11 13:54

« 「ガゴゼ」第三巻 彼は一体何者なのか | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 沢庵和尚打つ手なし? »