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2007.09.02

「シグルイ」第九巻 区切りの地獄絵図

 アニメの方も大暴走好調らしい「シグルイ」も、遂にあと一冊で二桁を数えるところまで来ました。連載第一話を読んだ時には、まさかここまでこの藤木と伊良子の物語が続くとは思いませんでしたが、さて、ここで迎えるのは、伊良子の失明、虎眼の死に並ぶ大きな物語上の区切り。第一話の時点から、この時が来るのはもちろんわかっていましたが、しかしまさかその後に、あんな地獄絵図が待っていようとは…

 前巻ラストの一瞬の交錯の後、地に伏したのは伊良子の方ながら、止めを刺すべく太刀を振り上げたところに――地に落ちた藤木の腕。という衝撃的なシーンから始まるこの第九巻。もちろん藤木は不屈の人、「残った右がやけに熱いぜ!」とは言いませんが(若先生が激怒しそうなネタ)、闘志は衰えず決闘を続けようとするも、五体の平衡を失ってダウンする姿は、平田弘史先生もかくやの異常なまでに情念の籠もった表情も相まって実に衝撃的です(かつて仕置きを受けた伊良子の如く、精神状態が麻酔の役割を果たして傷の痛みは凌駕しながらも、その極限まで鍛えた体術が逆に仇となって倒れるという皮肉な展開が見事)。

 正直、ここで終わっても十分にインパクトはありましたが、必勝を期した師範代、自らの弟分の敗北に、牛股が牛鬼モードに化しての暴れっぷりに比べればそれも霞みます。
 あの異形の大木刀・かじきを二刀に構え、(木刀で人体を)斬る、(地に伏した屍体を)砕く、(屍体の臓物を)捲き散らす!
 いやはや、本作の残酷ぶりには慣れたつもりでしたが、そんな思いを軽々と粉砕する牛鬼の猛威。藤木の腕が、この作品の正気をぎりぎりのところで繋ぎ止めていたとでも言わんばかりのゴアゴアシーンです。

 まったく、これが白黒二色の漫画であることを感謝したくなるほどですが――しかし、これが単なる血に狂っての行為でないことは、勘の良い方であればわかるはず。牛股の逆流れ対策については、これはもう原作朗読CDなどでも知っている方が多いと思いますが、それをこのような形でアレンジしてしまうとは、これは一本取られました。

 そんな素晴らしい原作粉砕を行う一方で、この巻のラストのエピソードでは、原作「駿河城御前試合」の第三番「峰打ち不殺」の主人公・月岡雪之介を登場させるという嬉しいサプライズもあり、まったく油断できません。役柄は、本作オリジナルですが、しっかり峰打ちの秘剣まで見せてくれるのがたまりません(が、月岡本人のデザインはちょっと適当っぽく…)

 その他にも牛股の戦慄の過去なども語られ、枝葉の部分も多かった――もちろんその繁りようはこの上なく見事ですが――ためか、実は「チャンピオンRED」誌最新号でもまだ決着のついていないこの死闘。果たしてどのように結末を描くのか、そして藤木の再起の日はいつか(それ以前に早く臓物の下から救出してあげて!)。いよいよ大台となる次の巻が今から待ち遠しいことです。


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