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2007.09.30

「武死道」第四巻 最後の咆哮

 朝松健の「旋風伝 レラ=シウ」をベースに、ヒロモト森一独自の世界を展開してきた「武死道」も、遂にこの第四巻で完結。新之介の旅路も、ここに終わりを告げることとなります。

 アイヌを強制連行して工場で働かせ、米国と密かに結んで北海道に独立国を樹立しようという黒田の野望に、最後の戦いを挑まんとする新之介と、それを見守る仲間たちの姿が、単行本一冊全てを費やして描かれるこの第四巻。
 思えば新之介の旅は、人生は、状況に流されていたと言うべきか、行き当たりばったりと言うべきか、とにかく彼の心中そのままに、あてどもなくさ迷うばかりでした。しかしその彼が、遂に自分自身が成すべきことを見出して立ち上がる様は、それまでの彼の苦しい旅を見続けてきただけに、胸に迫るものがありました。

 ことに、そるじゃあとして目覚めた新之介に、原田左之助が土方の剣――誠の剣を託すシーンは、無闇なテンションの高さもあって、実に男泣き度の高い名シーン。
 一方、それに続く新之介が誠の剣を真に我がものにするための特訓シーンは、ヒロモト漫画にしては珍しい趣向のようにも思えますが、しかし彼の心の中の迷いが消える様を明示的に描いたものとして、欠くことはできないシーンであります。

 そしてラスト――様々な人々の支えられて、遂に自らの旅を終えた新之介。その後に語られるのは、武士なき後の蝦夷地、いや日本国が、近代国家として変貌を遂げていく姿でした。
 原作である「旋風伝 レラ=シウ」と本作は、基本設定のいくつかを除いて、ほとんど別物となってはいるのですが、しかし、ラストに描き出されるのは、ともに――視点は少々異なるものの――古き世の代表たる武士と、その世を否定する者の最後の戦いの果てに訪れる、新しい日本の姿でありました。

 いわばこの両作は、失われ行く古き時代への鎮魂歌、死せる武士の最後の咆哮とも言うべき作品であり――一見全くその内容は異なるようでいて、その根本の精神においては、やがり同一のものがあったのだなと感じ入った次第です。


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