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2007.09.26

「大江戸ロケット」 廿五発目「匠の仕事が月に哭いて……」

 おりくの手により下田に建造された発射台。その試射を止めようとする銀次郎は、追ってきた鳥居と死闘を繰り広げるが、その煽りを食って打上げは失敗、多数の犠牲者が出てしまう。が、今度は遠山が清吉に大陸間弾道弾を開発するよう命令。ソラは月に帰ることを断念しようとするが、しかし職人たちの心意気を知った清吉は、皆のためにもロケット打上げを決意する。その頃、水野に取り入っていた黒衣衆・眼、実は青い獣の前に、赤井が単身立ちふさがって――

 今回を入れて残り二話という段階で、相当に原作とは物語を紡ぎ始めた「大江戸ロケット」。ご隠居ではありませんが、さすがにこの展開は予想できませんでした。
 考えてみれば、前回と今回で大きな役割を果たしたおりく・遠山・青い獣(分裂体)は、いずれもアニメオリジナルのキャラクター。それが物語の中心になれば、オリジナル展開になるのは当たり前といえば当たり前ですが、しかしそれだけでなく、アニメでは、舞台では届かなかった域まで、物語を掘り下げようとしているように感じられます。

 それは、技術者・科学者における公と私の問題とでもいいましょうか――望むと望まざるとに関わらず、個人が扱うには大きすぎる力を手にした時に、技術者は、科学者はどのように行動するべきか。
 もちろん、世のため人のためになるように使うのがベターではありましょうが、しかし例えばそれが――抑止力という名目こそあれ――兵器として多くの人を傷つけかねないものに使われるとしたら(今回、下田で打上げ事故で多くの犠牲者が出たのは、もちろん銀次郎の行動が原因ではありますが、しかしこれは科学技術というものが本質的に孕む危険性の、一つの顕れということと見ることもできるでしょう)
 いや、そこまで大げさに考えないまでも、その力をお国のためといったマクロなレベルでなく、自分自身と周囲の人々のためというミクロなレベルで使うことは、非難されるべきことなのかどうか。
 今回、清吉が直面したジレンマは、おそらくは古今東西の様々な技術者たちが直面したものでしょう。

 本作では、どう見ても悪役の水野や鳥居が清吉たちに対置されていたために黒白が付き易くなっていましたが、しかし今回、遠山も同様にロケットの兵器利用を考えていたことが明らかになったことで、その境界も大きくゆらぎました(もちろん遠山の場合、これまで清吉たちを騙していたわけで負のイメージが強いわけですが、その目指すところ自体は、我が国を含めた現代の国家が当然のように行っているところであります)。

 それでは清吉は何を指標として行動すればよいのか――その答えを、本作においては三太と源蔵に見られるように、職人の、一種の心意気に求めています。
 自分が楽しければよいというそれは、「私」を完全に前面に出したものであって、それが本当に正しい答えかどうか、おそらく完全な答えを出すことはできないでしょう(個人的には共感できるのでしょうが、仮にいまこの日本でこれと同じことを言ったら、袋叩きに遭うことでしょう)。

 しかし最初から大きな「公」のためになるものではないとしても、小さな「私」を束ね積み上げるることによって、その「公」と同じくらいの規模の「私」を満足させられるかもしれない、というのは、理想的に過ぎるかも知れませんが、魅力的な考え方ではあります。


 と、個人的には色々と考えさせられてしまったのですが、まあそういう難しい話は抜きにしても、物語が大いに盛り上がっていることは間違いありません。
 特に今回のラスト、眼に取り憑いていた青い獣に対して、八丁堀の同心時代にもなかったような凛とした姿で赤井が立ち向かおうとする姿には震えました。果たして赤井の真意が那辺にあるのか、それはまだわかりませんが、理屈抜きに格好良かったことは間違いありません。

 赤井はこれまでに罪を重ねすぎたためにわかりませんが、次回最終回で、一人でも多くの登場人物が笑顔になれることを祈ります。
 特に、レギュラー陣の中で唯一今回出番がなかった鉄十とか(いつでも幸せそうな奴ではありますが)。


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