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2007.09.13

「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」 無法の町に秘女神見参!

 環望先生といえば、お色気&アクション主体のコミックを得意とする漫画家という印象がありますが、同時に、名著「蔵出し絶品TV時代劇」の執筆者の一人であることからもわかるように、時代劇に対して深い愛情と理解を持ったクリエイターでもあります。その環先生が伝奇時代コミックを描くとどうなるか? その答えが「マガジンZ」誌10月号より連載が始まった本作「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」であります。

 舞台となるのは、戊辰戦争から十年後の箱館。いまだ発展途上にある日本の利権を貪るため、欧米列強、さらにはメキシコといった諸外国が乗り込んできた末に無国籍都市と化した箱館で、人ならざる者――妖人と、これを狩るために戦う二人の少女の激闘が繰り広げられるのですが…これが実に面白い。
 何しろ、あの箱館を、マカロニウェスタンに登場する無法の町を思わせる暴力と欲望の世界として描いてしまうのだから凄い話。もちろん日本の警察が治安維持に当たっているものの(ここで登場する警部長がまた曰くありげで…やっぱり永○○○辺り?)、実体は各国領事館の治外法権が複雑に絡み合い、裏ではどんな腐敗と陰謀が隠れているかわからない――もう何があっても、何が出てきてもおかしくない、そんな世界で始まる物語が詰まらないわけがありません(また、各国のコスチュームがいい意味で胡散臭くて最高)

 そんな世界で暗躍する、各国領事館が送り込んだエージェント=人ならざる能力と姿を持つ妖人ばらに立ち向かうのが、本作の主人公・彪とヒメカ。
 父の遺命を胸に、一人妖人を狩り続けていた彪と、「ヒメガミ」を名乗り、彪に勝るとも劣らぬ戦闘力を見せるヒメカ――どちらも氏素性には不明な部分が多い…というよりほとんど不明なのですが(唯一、クライマックスで明かされる彪の父の名がまたとんでもない人物で最高!)、ボーイッシュな彪とコケティッシュなヒメカというコンビはなかなかに魅力的です。
 どちらも、いざバトルとなれば、肌も露わな戦闘スーツを纏う(というか脱ぐ?)のは、個人的にはちょっと気恥ずかしいですが、なあにこれもサービスサービス、エンターテイメントとしては大事な要素であります。

 ただ、少し残念だったのは、二人の敵となる妖人たちが、数はたくさん出てきたものの、どうも個性に欠ける者がほとんどだった点ですが、これはまだまだ敵の攻撃も序の口と取るべきでしょう。
 またさらに言えば、舞台がパラレルワールドの箱館らしいのが、大変に残念でならないのですが(基本的に架空戦記とパラレルワールドはこのサイトの対象範囲外なので…)、本作が、そんなことにこだわっていたら勿体ないほどの快作であることは間違いのない話。
 何があってもおかしくない舞台設定に奇怪な敵、そして美しくも訳ありの主人公二人。それに加えて世界の命運を握るという「○○○の封印」なんてものが出てきたら、無視できるわけがありません。伝奇ファンであればチェック必須の作品であります。


「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」(環望 「マガジンZ」連載) Amazon

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