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2007.09.17

「大江戸ロケット」 廿四発目「○○をのっとれ!」

 遂に完成し打上げを翌日に控えたロケットだが、密かに忍び込んだ青い獣により地上で爆発してしまう。しかし将軍の肝煎りでロケット計画は続行、時は流れて天保十四年閏九月…再び打上げが近づいた頃、清吉はお伊勢の勧めで下田に出かける。だが、そこで彼が見たものは、巨大な打上げ台だった。鳥居の命により、おりくらの手で外国船を狙う砲台として作られた打上げ台に怒りを隠せない清吉だが…

 泣いても笑ってもあと残すは三話のみ。その最終三話の幕開けは、しかし、嵐の前の静けさ、ラストスパートに向けての地均しという印象でしょうか。
 巨大宇宙船を巡る戦い以来鳴りを潜めていた赤井が、そしておそらくは眼に取り憑いた青い獣が再登場、銀次郎も帰還し、レギュラー勢が再び全員集合したことになります。

 そして、本作の中核を成す二つの要素が、(これまで以上に)クローズアップされました。
 その一つはボーイミーツガール。清吉とソラが出逢ったことから始まったこの物語、ソラが空に帰って本当に二人は別れてしまうのか、二人の気持ちの行方がどうなるか。ソラの望みを叶えることがソラとの別れに繋がるというジレンマは、最初からわかっていたものの、打上げ直前になってみるとやはりそのシチュエーションの文芸的うまさというものが感じられます。
 …ただ、江戸っ子のくせに(偏見)ほんとに直前になってもウダウダ言ってる清吉はどうなのよ、という気持ちは正直しますが(いや、上記のジレンマのためではあるのですが)。

 そしてもう一つは、江戸時代におけるテクノロジー。以前に描かれた、鳥居からおりくへのロケット開発の依頼、すでにうやむやのうちに消えてしまったかに思っていたこの依頼がここに来て思わぬ形で前面に出てきましたが、これが実に興味深い。
 なるほど、現実世界のロケット開発史は軍事と切り離せないものでありましたが、その構図を江戸時代に、この天保期に当てはめるとどうなるか。一種の国粋主義者である鳥居がこの技術を手にした場合、今回のような形で実を結ぶことは十分に考えられます。

 江戸時代に月ロケットを作る、それ自体は身も蓋もない言い方をすれば絵空事ではあるのですが、しかし、仮にそれだけの技術が江戸時代に存在した場合、それが社会に及ぼす影響は如何なるものになるのか。それを無視せず描いていることに、何と言いましょうか、SF的リアリズムというべきものを感じますし、その絵空事の中のリアリズムが、本作が単なるドタバコメディではなく、いい意味で油断のできない本作の魅力となっているのだと思います。

 …と、今更なことを書いてしまいましたが、さてそれではこの先の展開がどうなるか、全く読めないのも事実。
 ソラを月に帰すだけでも大変なところに、ここに来てロケット技術を「悪用」したもう一つのプロジェクトが出現したため、この始末をどうつけるのか、正直予想できません。

 予想できないと言えば、どう動くか読めないのが赤井の行動。どうやら銀次郎への対抗意識があるようですが、それで一体何をしようというのか。清吉サイドのプラスになることをするとは思えませんが、青い獣との因縁を含めて気になるところです。
(さらに言うと、なんだか意味ありげな表情を見せる野次馬だか知らない人だかが気になります)


 …最後に、これは全く個人の趣味趣向の問題ですが、ちょっと残念だったのは、今回作中の時間が急に流れて閏九月になってしまったこと。
 時代ネタ的にこの時期にしなければいけないのはよくわかりますが、無理矢理「年表に合わせた」感が漂うのが、どうにも気になります(これまで寄り道・脱線が多かっただけになおさら…)。
 はじめに史実ありきで物語を構成するのは、時代ものとして当たり前ではありますが、もうちょっとスムーズに見せてくれても良かったのではないかな…と感じた次第です。


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» 大江戸ロケット・第24話 [たこの感想文]
「○○をのっとれ!」 ロケット作りも佳境に入ってきた。打ち上げも近づいてきた。最 [続きを読む]

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