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2007.09.18

「九十九眠るしずめ 明治十七年編」第一巻 九十九の名に籠められしもの

 高田裕三の明治妖怪アクション「九十九眠るしずめ」、しばらく取り上げておりませんでしたが、楽しみに待っていた新刊が久々のお目見えで喜んでおります。この新しい巻からは、「明治十七年編」と銘打ち、刊数もリセットしての新章突入。物語は九十九神誕生の秘密を巡って二転三転、いよいよ核心に迫り始めた感があります。

 九十九神を操る東方支天衆護神民としずめ&トラゲンの戦いが終わらぬうちに年は明けて明治十七年、奇怪な死を遂げた護神民と思しき男が持っていた写真に映っていたのは、被害者としずめの父の姿…。さらにそのしずめの父から遣わされたという気障な陰陽師兄妹が現れ、色々な意味でしずめとトラゲンの間に波風が立つことになります。
 果たしてしずめの父と支天衆護神民の関係は、そして殺された男が守り、陰陽師兄妹が求める外道の金輪とは――苦しい戦いの中、遂に外道の金輪を手にしたしずめですが、しかしそれは九十九神という存在、そして支天衆護神民の正体に関わる新たなる謎を二人の前に示すことになるのでした。

 と、物語のキーアイテムとなるであろう外道の金輪なるアイテムが出現、それが思わぬ形で九十九神の正体を巡るエピソードと関わって、一気に物語がヒートアップした感があります。
 ことに、九十九神が何故九十九なのか? という、九十九の名に籠められた意味にスポットを当てた展開は、そのネーミングに全く疑問を抱いていなかっただけに、一種のミスリーディングに引っかかった格好になって、思わぬ驚きを味わわされました。

 キャラクター描写の方も相変わらず達者で、おっさん読者的にはちょっと狙いすぎなんじゃという印象のあったしずめのキャラクターが、事態が徐々に混迷を深める中、単に可愛いだけでなく、実に健気で応援したくなるキャラになってきたのには少々感心いたしました(トラゲンの方は非情なんだか純情なんだかまだちょっと中途半端な印象がありますが…)
 アクション演出の方も水準以上で、十分以上に安心して読める作品となっているのは、さすがは…と言ったところでしょうか。物語の謎解き要素が強まってきたことが、全体に緊張感を与えているのが良い方向に作用していると言えます。

 ただ一点残念だったのは、おそらくはこの巻の、いやこの物語の根幹を成すであろうエピソードである平安パート(あの、安倍晴明やらがいた平安時代であります)が、非常に唐突かつ駆け足に処理された感があったことでしょうか。この辺り、もう少し丁寧に描けば単行本一、二冊分は…あ、いや、あんまり長くなっても困るからこれでいいのかな(脳裏をよぎる「3×3 EYES」の悲劇)。
 おそらくはまだまだ平安時代にまつわる謎・秘密はあることでしょうから、そこはまた、おいおい描かれていくのかもしれません。

 それも含めて、まだまだ全く先が読めない本作。この巻のラストエピソードや次巻予告を見るに、しずめを巡る運命はいよいよ過酷になっていくようですが、そこは彼女の持ち前の明るさで乗り切ってくれることと期待して、次の巻を待つことといたします。


「九十九眠るしずめ 明治十七年編」第一巻(高田裕三 講談社ヤングマガジンKCDX) Amazon

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