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2007.09.01

「モノノ怪」 第八話「鵺 前編」

 気がつけば既に外で咲いている花はナツノハナから秋の花に移りつつありますが、「モノノ怪」の方ももう残すところは二エピソードとなっています。その一つ「鵺」の前編が今回、さる公家の姫君の婿取りを巡り、モノノケによる惨劇が…起こるのですが、メインとなるのは聞香勝負、何故かそこに薬売りも加わって、えらく混沌とした様相を呈するのでした。

 京は聞香の名門・笛小路家の娘である瑠璃姫の婿を決めるために開かれる聞香。婿候補は四人――公家の大澤、商人の半井、侍の室町、あと一人は薬売り…「どうも」っておい(平然とその場に座っている薬売りに爆笑)。
 もちろん四人目は別にいたのですが、集合時間に現れないため失格、そこで勝手についてきてしまった薬売りが参加して、聞香勝負――組香が始まります。
 ここで行われる組香、源氏香は、物語中でも説明されましたが、香を五種×五包=二十五包用意してそのうちの五方を焚き、その内容を当てるというもの。その組み合わせは全部で五十二種類、その内容を、五本の縦線(作中では札)と、同じ香を意味する横線の組み合わせで表した図で示すことになります。何だか説明を聞くだけでも非常にややこしいルールですが、ここで口元にふんにゃかした微笑を浮かべて札をためつすがめつしている薬売りが異常に可愛くて…何だかもうどういうルールでもいいやという気分になります。

 さて一勝負終わって退席した一同。いかにも胡散臭く姿を消した三人組は、それぞれに「東大寺」なるものを探しているようですが――それぞれ収穫なく部屋に戻ってくればそこには薬売りが机の上にという、いきなりの衝撃映像。本当に薬売りは高いところ好きだなあ、と一瞬感心しましたが、ここでは床一面にお馴染みのモノノケレーダーたる天秤を放っていたためのようですが、しかしその肝腎の天秤が迷っているとのこと。そして隣の間への襖を開いてみれば、今度こそ本当の衝撃映像、行方不明となっていた四人目の男・実尊寺が部屋の天井から床までを血に染めた猛烈な惨死体となって転がっていたのでありました(この人、アバンタイトルで殺されていたのですがこれがまた一見の価値ありのもの凄いポップな惨殺されっぷり)。
 さらに瑠璃姫はと見てみれば、これまた首筋を刺されて壮絶死。何だかわからないうちに二人の人間が、しかもその一人は今回の中心人物とも言うべき(微妙に蛇っぽい)姫様が殺されて一同ボーゼン…かと思いきや、「東大寺」を求めて我先にと走り出す三人組に、さすがの薬売りもボーゼン。「待てーっ」と珍しく声を荒げたのがさらに笑いを誘います。

 さてその「東大寺」を何としても手に入れようとする三人組、姫に仕える老婆が目が悪いのをいいことに、姫の死を隠して祝言をあげ、とりあえず「東大寺」を手に入れてしまおうと目論みます。そのためにもう一度行う組香の香元を薬売りが務めることになって――というところで前編おわり。


 前回の捻った演出・構成に比べると極めてストレートな展開だった今回、特に前半は組香で終わってしまって、色々と身構えてみていたこちらとしてはちょっと拍子抜けしてしまったのですが、素直な目で見返して、今回もやっぱりなかなか面白い回でした。
 特に、薬売りの微妙にすっぽ抜けた存在感が実に楽しく、欲の亡者のような――しかしそれでいて演出はコミカルなのですが――三人組の求婚者とよい対比となっていたかと思います。…というか、そんなことを抜きにしても今回の薬売り回りの演出は面白すぎたのですが。

 そしてまた、印象に残ったのは作中のビジュアル構成。モノクロの世界に、薬売りと一部のアイテムのみがカラーで示されるという不思議なスタイルなのですが、これが組香シーンで、香を聞いた瞬間にパッと周囲がカラーとなる演出が実に印象的でした。今回の中心となるのは「香」ではありますが、どうやっても直に伝えようのないその「香り」というものを伝えるに、この手で来たか、と大いに感心した次第です。でも馬糞はないよな。

 さて――しかし今回は事件が起こるばかりでその真相は未だ藪の中であります。。タイトルとなっている「鵺」は、鳴き声しか現れませんでしたが(これはモノノケではなく鳥のトラツグミの鳴き声ですが――鵺の鳴く夜は恐ろしい)この鵺は、頭は猿、胴は狸、手足は虎、尾は蛇という怪物で、源頼政に討たれたという伝説がある代物。転じて、正体不明の人物やあいまいな態度をも指す言葉にもなりましたが、まさに現状は鵺的状況とでも言ったところでしょうか。
 その謎を解く手がかりとなるのが、三人組が探し回り、ラストで薬売りが正体を問い質した「東大寺」なのでしょうが――やはり香絡みで「東大寺」と言えば、やはり真っ先に思いつくのは正倉院の寺宝・蘭奢待。その名の中に「東大寺」の三文字を隠すこの秘木は、実は先に触れた源頼政が鵺を退治た際に褒賞として与えられたという繋がりがあったりして…
 いずれにせよ、石碑(?)に掛けられた上着、庭をうろつく青い犬、室町が目撃した不思議な幼女と意味深なアイテム・キャラクターも様々に存在しており、ここは一つ頭を空っぽにして、次回を楽しむこととしましょう。


 ちなみに、今回よりOPのヴィジュアルが一部新変更。大筋は変わりませんが、タイトル画面でこちらに振り向く薬売り、現代風の服装で猫を追う少女、ラストに影絵のように現れる薬売りなど、随所に新カットが挿入されていて印象に残ります。特にラストの薬売りが格好良くてねえ…


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