« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 沢庵和尚打つ手なし? | トップページ | 「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」 無法の町に秘女神見参! »

2007.09.12

「戦国の兵法者 剣豪たちの源流とその系譜」 剣豪と庇護者と

 自身も剣を学ぶ牧秀彦先生は、これまで剣豪・兵法者をテーマにした著作を発表してきましたが、本書「戦国の兵法者」は、「剣豪 その流派と名刀」「剣豪全史」に続く、いわば剣豪テーマの新書第三弾。それぞれ剣豪と流派、剣豪と時代といったテーマの二作に続いた本書では、兵法者(剣豪)と大名の繋がりが描かれます。

 兵法者と言えば、やはり一流の主、独立独歩の求道者というイメージがありますが、しかしその実、庇護者の存在を必要としていたのは事実。足利義輝のような例外を除き、自らの技を認め、パトロンとして陰に陽に援助を行ってくれる権力者――つまり大名――の存在があって初めて、兵法者は己の道に専念することが出来るのです。
 本書では、名だたる兵法者と、その庇護者であった大名との関わり合いを一ケース一ケース挙げて語っていくスタイル。その中で取り上げられた個々の兵法者と大名のエピソードはどれも実にユニークで、それこそ一つ一つがそのまま短編小説になりそうなほどの内容です。
 特に細川家と兵法者の長く深い関わり合いについては、まさしく事実は小説より奇なりというべきもので、長いタイムスパンに沿って兵法者と大名の関わり合いを探っていこうという視点に感心いたしました。

 もっとも、本書のアプローチは実にユニークで興味深いものではあるのですが、そこに何とか意義を見出そうとするあまり、牽強付会のきらいがある部分(伊藤一刀斎と大谷刑部の項など)があるのは事実。また、内容を生真面目に語ろうとするあまり、少々堅い印象があることも否めません。

 しかし、本書のユニークなアプローチの果て、終章にて示される兵法者と大名の繋がりの意義・意味解釈は、それを補って余りあるもの。特に太平の時代において、人材育成の教官としてや一種の宣伝効果の期待など理由は様々にあれど、大名が兵法者に与えた庇護が、人殺しの術であった剣術を、一種の文化の域に高めて現代に伝える原動力となったという結論は、なるほど当たり前に感じられますが、一種コロンブスの卵的な驚きがあります。

 後書きで自身が書かれているように、江戸時代を舞台にした作品が大部分を占める牧先生ですが、今回の成果を踏まえて、牧流戦国兵法者列伝のようなものも見てみたいな…と、ファンとしては思った次第です。


「戦国の兵法者 剣豪たちの源流とその系譜」(牧秀彦 学研新書) Amazon

|

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 沢庵和尚打つ手なし? | トップページ | 「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」 無法の町に秘女神見参! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/16420216

この記事へのトラックバック一覧です: 「戦国の兵法者 剣豪たちの源流とその系譜」 剣豪と庇護者と:

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 沢庵和尚打つ手なし? | トップページ | 「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」 無法の町に秘女神見参! »