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2007.10.20

「殿といっしょ」第一巻 キャラクター化と歴史引用センスの妙

 伝奇ものに限らず、現在進行中の時代もの漫画は、それこそ山のようにあるのですが、その中で最も僕が楽しみにしているかもしれない作品が、この「殿といっしょ」。「コミック戦国マガジン」誌に初登場した時から、楽しみに待っていたこの作品の単行本第一巻が、先日ついに発売されました。

 本作はジャンルでいえば四コマギャグ。殿…戦国武将たちがカリカチュアされて繰り広げる、実にしょうもない(もちろん褒め言葉)あれやこれやを描いた作品であります。
 登場する戦国武将は、もちろんいずれも有名どころばかり。戦国時代に少しでも興味のある方であれば皆知っているような人物がほとんどですが、その崩し方が実に愉快なのです。

 信長は事ある毎に松明を持ち出す焼き討ち好きで、秀吉は名パートナーの三成と共にお笑いで天下を取ろうとするお笑いマニア。謙信はおかん気質だし、信玄はその謙信を(色々な意味で)意識しまくり。再来年の大河ドラマの主人公・直江兼続は、主君の景勝が超無口で鉄面皮なのをいいことに、余計なことまで喋りまくる超インテリだし、智将であるはずの幸村は、父と一緒に兄・信幸のジャマをすることが生き甲斐みたいな怪人であったりします。
 そして表紙から巻末まで出ずっぱり、ほとんど主役級に目立っている政宗は、大の眼帯マニア。身の回りの全てのことを眼帯に結びつけずにおれぬその情熱を見ていると、もしかしてこの人本当は大物なのでは!? と思わされたり…

 こう書くと、とにかく面白ければOKの漫画のようですが(いや実際その通りなのですが)、しかし、時代ものファンとして感心してしまうのは、登場人物たちの――つまり歴史上の人物たちの――キャラクター化の見事さであります。

 本作に登場する武将たちは、どれもギャグ漫画のキャラクターとして面白いのは当然として、それと同時に、史実にとっかかりがあろうとなかろうと、「ああ、この人物だったらこういうことするかも…」あるいは「こういうことする人物だったのね…」と、妙に納得してしまう違和感のなさ。
 これはもちろん、作者のギャグセンスによるところも大ですが、それと同時に、たとえば信幸の妻・の昌幸追い返しみたいなネタをさらりと逆の中に仕込んでくる、歴史引用のセンス――そしてもちろんこれは歴史パロディのセンスにそのまま繋がってくるわけですが――の巧みさも、大きく働いていると感じます。

 もちろん、そんなことをブチブチ言っているのは愚の骨頂、本作については、とにかく何も考えずに楽しむべきなのでしょう。第二巻はまだまだ先のこととは思いますが、今から楽しみして待つこととします。


 ちなみに…この第一巻のゲストページには、「BRAVE10」の霜月かいり先生による政宗が描かれているのですが――眼帯マニアはそのままに、霜月先生のちょっと耽美な筆が入ってもう大変なことに。これは必見です。


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