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2007.10.14

「天保異聞 妖奇士 奇士神曲」 獄二「ディーテの市」

 佃衆殺害の廉で獄に繋がれた小笠原は、鳥居の手により死を偽装され、小伝馬町の牢に入れられる。そこで彼が出会った牢名主こそは、かつて蛮社の獄で捕らえられた高野長英だった。一方、往壓たちも鳥居の手により匿われていたが、宰蔵は小笠原に逢いたい一心で浮民に身をやつし、牢に近づく。が、牢屋敷では、外に出たいと願う囚人たちの想いが火の妖夷・赤猫が出没。長英に唆された宰蔵は、自らの舞で赤猫に力を与え、牢は火に包まれるのだった。

 もうすぐ最終巻が発売されるにもかかわらず、別れがつらくてなかなか紹介できなかった「奇士神曲」ですが、ようやく思い切って紹介。まずは獄二「ディーテの市」であります。

 前回、ハメられたとはいえ人を斬ってしまった小笠原様。なぜか町人の牢に入れられているところから始まって、おいおい、考証どうなってるのよ(江戸時代は身分によって入れられる牢が異なります)と思ったのはマニアの浅知恵。ちゃんと、水野派の口封じから守るための鳥居様の手が回っていたのでありました。
 が、そこに待っていたのが、鳥居様も恐れる男、あの高野長英であったとは…

 「妖奇士」に高野長英が登場する、させたいということは、以前から聞いていたように思いますが、しかし鳥居様以上に有名な歴史上の人物ゆえ、どのようなキャラクターとして、そしてどのような扱いで描くのか、気になっていたところですが、これがさすがに見事なキャラの立たせ方。
 史実として伝えられる高野長英の行跡を見るに(いや私の場合、山風の「伝馬町から今晩は」の凄まじい地獄の使者っぷりが印象に残っているせいかもしれませんが)、単なる不運な学究の徒とは思えない、誠に失礼ながら一種山師的なバイタリティすら感じてしまうのですが、本作での描写はまさにそれだったと思います。

 知性と同時に豪毅さを感じさせるデザインに、声はあの男の中の男を演じさせたら斯界屈指の名優・大塚明夫という男臭さながら、しかし、いかにもこの作品らしい陰と屈折を感じさせるキャラクターとして設定されており、その存在感・人間としての貫目は、鳥居様に匹敵するものがあると言えます。
 才能と野心に溢れ気骨ある人物が、社会や政治の動きによって存在を抹消されたとき、果たしてどうなるか、何を望むのか…浮民として牢に近づいた宰蔵に、言葉を巧みに選びつつ、赤猫に力を与えるよう唆すシーンの厭らしさは、実に見事としかいいようがありません。
(ちなみに、長英と小笠原様との出会いを描いたシーンに、説十二で死んだ加納さんがちゃんといたのにちょっとしんみり…)

 そして宰蔵と言えば、彼女の心の行方もまた見所の一つ。髷を切り(ここでオトナアニメのインタビューで、髷の有無に言及していた會川氏の強い言葉を思い出しました)、入れ墨を入れて浮民に身をやつし、牢の世話役となった彼女の決意は、現実の歴史でこの役割をどんな層が担っていたかを考えれば、どれほど凄まじいまでの想いに満ちたものかと、粛然とした思いにすらさせられるものがあります。
 もちろん、いかに長英に唆されたとはいえ、いかに赤猫による間接的なものとはいえ、牢屋敷を火に包んでしまったのは、とんだ八百屋お七と言うべきかもしれません。しかし宰蔵自身の言葉で語られている通り、男としても女としても生きられない宰蔵が、ただ一つ、奇士として己自身でいられる場所が小笠原の下であることを考えれば、責める気にもなれないのが正直なところ。
 そしてもちろん、宰蔵だけは普通の女でいさせたかった、という往壓の想いにも心からうなずけるものがありますが――いやはや、この辺りのドラマ設計は実にうまい(ただ一つ、これは今に始まったわけではないのですが、「一度妖夷の肉を食べたものは、これを食べ続けずにはいられない」という要素に今ひとつ重みが感じられないのが残念。この辺りがもっとはっきりと見えていれば、宰蔵のノーフューチャーぶりにさらに重みが加わったかと思います)。

 そんな人々の想いを込めて牢屋敷は燃え、高野長英は史実通り脱獄。さてこの先の物語に何が待ち受けるか…考えれば考えるほど想い気持ちになってきますが、ファンとしてはただ先の光明を信じてついていくのみ。往壓にすがりついた玉兵親分のような気持ちで(本当にこのシーンでの親分の言葉は、我々ファンの気持ちをそのまま代弁する思いですわ…)続くエピソードを待ちたいと思います。
 …というわけで、DVD七巻に同時収録の獄三に続く。


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