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2007.10.29

「公家侍秘録」第六巻 冴える題材チョイスの妙

 公家侍の活躍を通して江戸時代の京を活写する高瀬理恵先生の「公家侍秘録」の最新第六巻が発売されました。不定期連載ということもあって、前の巻からほぼ二年ぶりの登場ではありますが、その味わいに富んだ内容は相変わらずで、読者としても違和感を感じることなく、作品世界を楽しむことができました。

 本作の最大の魅力は、何と言っても確かな考証に基づいた、そして普段ではなかなか触れることのできない江戸時代の、京の文化の姿でありますが、言うまでもなくこの巻においてもそれは健在であります。巻末の描きおろし掌編を含めて全七編それぞれに、以下のように実に興味深い題材が選ばれております。

「贅沢の味」…京野菜と下肥集め
「ふつつか者の功名」…公家の茶会
「糺の森の…」…商家の受領名
「虫籠と虫めづる姫君」…虫籠作り
「秋の金魚」…金魚作り
「百間屋敷の決闘」…本願寺の寺侍の存在
「薫子、ツキに恵まれるの巻」…公家の正月行事

 この中でも特にユニークなのは、巻頭に収められた「贅沢の味」でしょうか。あくどいやり方で儲ける料亭を舞台にした物語ですが、ここに登場する下肥集めは、モノがモノだけに、小説はともかく時代劇などではなかなか扱われない題材(あまり詳しくないので偉そうなことは言えませんが、「大江戸ロケット」の第十一話などかなり珍しい部類なのではないでしょうか)。それを一見雅やかな京の公家の世界と絡めてくるとは、あまりにも意外ですが、この辺りの題材チョイスの妙はさすがだと思います。
 ちなみに、この作品では、農家と、役人を抱き込んだ料亭との間で、下肥集めの代金や権限を巡って争いが起こるのですが、江戸時代では実際にしばしば起こった争いのようですね。

 さて、その一方で、これは個人的な印象ですが、この巻のエピソードはどれもちょっと――本当にちょっとだけ――質量ともに軽いところがあったかな、という気がいたします。「守役」に関するエピソードがほとんどないこともありますが、少しドラマ的にあっさりめの味わいのような気がして、それだけが少々気になったところではあります。
 もちろん、これはあくまでも個人の嗜好の範囲内、作品の全体的な面白さは、これまでと変わることはありませんのでご安心を。次の巻ももちろんのこと、スピンオフの表具師シリーズの単行本化も楽しみにしたいと思います。


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