« 「天保異聞 妖奇士 奇士神曲」 獄四「地上楽園」 | トップページ | 「風流冷飯伝」 一筋縄ではいかぬ風流 »

2007.11.08

「花かんざし捕物帖」第一巻 意外な取り合わせの妙

 ひと頃から見ればまるで夢のようなほどメジャーになった山田風太郎作品ですが、メディアミックスにより他メディアに進出したものも決して少なくはありません。本作「花かんざし捕物帖」もその一つでありますが、原作・絵師ともに、山風ファンにとってもなかなかに意外な、異色のチョイスとなっております。
 その原作とは「おんな牢秘抄」。そして絵師は島崎譲――正直なところ、かなりの山風ファンでもこのチョイスは予想できなかったのではないかと思います。

 舞台となるのは享保十四年の江戸、小伝馬町の女牢。そこに入ってきた一人の美少女・姫君お竜――罪状はなんと将軍暗殺未遂――が、同じ牢に繋がれた哀しい運命に翻弄される女たちの身の上を聞き出し、彼女らを罪に陥れた真犯人を暴き出す、というのが原作の、そして本作の基本スタイルであります。

 と、こう書いただけでおわかりかと思いますが、本作は山風作品の中では、かなり「普通の」時代ものに近い、裏を返せば異色作。何せ姫君お竜の正体というのが実は○○○○の○、徳川将軍が江戸城を抜け出して市井で事件を解決するのよりかはましかもしれませんが、とにかくとンでもないお話であります。
 が、これがつまらないかというと、全くそんなことはないのが、さすがと言うべきでしょうか。優れた時代小説家である以前に、優れた推理小説家である山風らしく、作中で描かれる事件はどれも怪奇色濃厚ながら、極めてロジカルに解決されるものばかり(そしてその事件が最後に…という念の入りよう)。
 また、このとンでもない主人公の設定も、その突拍子もなさが、風変わりな探偵役として素晴らしいキャラ立ちの効果を上げていると同時に、数ある捕物帳の中でもほとんど例のない、女性の事件専門の女性探偵という存在を実現させる力となっていると感じさせます。

 そしてこの一筋縄ではいかぬ作品を漫画化するのが、島崎譲氏というのが嬉しい。
 島崎氏といえば、やはり一般には「THE STAR」「覇王伝説 驍」」辺りが代表作として挙がるかと思いますが、時代伝奇ファンとしては何といっても「青竜の神話」などの、絢爛かつ瑞々しい、独自の味わいを持つ作品群の作者。そこから考えれば、この、ある意味漫画以上に漫画チックな美少女探偵をビジュアライズするには、うってつけの才能と言えましょう。

 確かに意外なチョイス、意外な取り合わせではありますが、その味は悪くありません。

 さて、この第一巻に収録されているのはその第一の事件、夫とその愛人を奇怪な紅蜘蛛の毒で殺したという曲芸師のお玉の物語。
 Web連載時はフルカラーだった原稿が単行本では二色刷りなのが残念ではありますが、その――いささかオールドファッションではありますが――絢爛かつ怪奇な物語世界は、巧みに漫画として描き出されているかと思います。
(ちょっとお話をじっくりと描きすぎではないか、物語の展開が遅いのではないかという印象はあるのですが…)

 現在、連載の方では第二の事件までが完結し、順調に物語は展開している様子。内容が内容だけに、是非ラストまできちんと描き切っていただきたいものであります。


「花かんざし捕物帖」第一巻(島崎譲&山田風太郎 講談社DXKC) Amazon

|

« 「天保異聞 妖奇士 奇士神曲」 獄四「地上楽園」 | トップページ | 「風流冷飯伝」 一筋縄ではいかぬ風流 »

コメント

意外な取り合わせの妙とはまさに。
あの絵柄で、女牢ものとはどんなになることやら・・・とか思っていましたが、囚人の白装束を、さながら天女の衣の如く艶やかに描く手腕には心底驚きましたw
実は原作未読なので、次巻予告を見るともう完結してしまいそうな印象を受けてしまいましたが、まだ続くのかー、良かった・・・

投稿: mura-bow | 2007.11.09 00:33

確かにあれはうまかったですねえ>白装束

で、次回予告は原作を読んでいた僕もちょっと不安になったのですが(あれは書き方が悪いよ)、大丈夫、ちゃんと連載してます。

なんたってラストにはとんでもない仕掛けがありましてなあ…ヒヒヒ

投稿: 三田主水 | 2007.11.09 00:58

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/17009731

この記事へのトラックバック一覧です: 「花かんざし捕物帖」第一巻 意外な取り合わせの妙:

« 「天保異聞 妖奇士 奇士神曲」 獄四「地上楽園」 | トップページ | 「風流冷飯伝」 一筋縄ではいかぬ風流 »