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2007.11.22

「乱飛乱外」第四巻 二つの視線の違いは

 オビの久米田先生のガチ発言に戦慄しつつ手に取った「乱飛乱外」の新刊ですが、気づいてみればもうこれで四巻目。
 表紙に描かれた、微妙にけしからん格好をした巫女さんのとんでもない正体について語られる第一話を除けば連続ものとなっておりますが、これまでの雷蔵の婿入り騒動ストーリーとは異なり、雷蔵とかがりの絆に一大危機が訪れることとなります。

 お家再興のため、姫君への婿入りを目指して放浪する雷蔵一行の前に現れたのは、雷蔵の家と縁があるという眼鏡っ子・薊。家事全般の達人でよく気がつき、もちろん美少女という薊の存在が気が気でないかがりですが、ついに彼女が宿敵・冠木星眼の配下であると見破ります。
 が、それこそは薊の罠。巧みにかがりを嘘つきに仕立て上げた薊のため、かがりは雷蔵の信頼を失ってしまいます。
 そんな彼女たちの隙を突いた薊の更なる奸計により、無実の罪で捕らわれる雷蔵。そしてかがりの前には、彼女を付け狙う(性的な意味で)星眼その人が現れ――

 言ってみれば時代アクションラブコメたる本作ですが、ラブコメということは、当然(?)主人公カップル破局の危機というのは避けられないネタであります。
 が、本作においては、それは単なる失恋以上の危機。雷蔵との心の絆が途切れたということは、彼女の「神体合」――恋する相手の視線を感じることにより無双の身体能力を発揮する秘術もまた破れたということを意味するのですから…
 その本作ならではの設定を活かしたストーリーは、達者な絵柄・アクション描写もあって実に楽しいのですが、それをさらに盛り上げるのは、いよいよ物語の全面に現れた冠木星眼の存在でしょう。

 周囲に凄腕の美女をはべらせ、「天下布女」なるとんでもない旗印をかかげる、戦国のパプテマス・シロッコとでも呼ぶべき星眼は、しかし、己の配下を弊履を棄てるがことく見捨てて恥じない男であり、その点において、雷蔵と全き対照を成す存在であります。

 そんな雷蔵と星眼の二人をそれぞれ慕うかがりと薊が激突するラストバトルは、同時に、二人の信条・心根が間接的にぶつかりあう戦い。部下を信じると言い条、冷然とこれを見下す星眼と、術の発動条件であるか否かを問わず、心からの熱い瞳を向ける雷蔵――
 二つの視線の違いはそのまま二人の生きざまの違いであり、そしてかがりの神体合は、その違いこそを原動力とする、ある意味本作の象徴と言える術と言って良いかと思います。

 ギャグやアクション、お色気描写など魅力は多い作品ではありますがしかし、この物語構成の巧みさも、紛れもなく本作の大きな魅力と感じた次第です。


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