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2007.11.18

「天保異聞 妖奇士 奇士神曲」 獄五「神話」(その二)

 さて昨日の続き。
 この獄五で描かれた物語の結末には――予感めいたものはあったにせよ――驚かされましたし、特にTVの最終回を考えると複雑なものも感じましたが、しかし、不思議に暖かいものを感じたのもまた事実。

 思えば、「物語」という異界――それは実は「現実」のぴったり裏側に存在しているものであり、それだけに逃れ難いものであるのですが――に、ある時は対峙し、ある時は飲み込まれる人々の姿を一貫して描き続けてきた本作。
 それがこのような形で終わることは、一見は「物語」への敗北にも見えますが、しかし、往壓を救わんとする仲間たち…誰よりも何よりも、最も異界を望んできたはずのアトルがラストに見せた姿、取った行動は、人が己の「物語」を超克することへの希望を見せてくれたと言っては甘すぎるでしょうか。
(さらに言わせていただければ、その意味ではこの「奇士神曲」の結末は、TV版の最終回で描かれたものと、実はさして変わらぬものであるようにも感じられます)


 …ダンテの「神曲」で、旅の果てに最後に辿り着いた先は至高天であったのに対し、この「奇士神曲」で最後に待っていた先はあくまでも現世。
 これを長英が言うような絶望と見るか、はたまた人の世に対する希望と見るか…その解釈をこれ以上書くのは野暮というものでしょう。


 さて、昨日の冒頭にも書きましたとおり、これにて「天保異聞 妖奇士」も完結。
 私は、はじめは天保時代を舞台とした時代伝奇ものという、題材に注目して見始めたのですが、こうして最後まで見届けてみれば、題材のみならず、虚構(=物語)でもって現実を切り取ってみせるという、その手法において、まさに伝奇的な作品であったと感心いたします。
 そしてこうした作品であったからこそ、変わらぬ現実の中で変わった物語を展開しなければならないという、一種矛盾した構造を持つ時代伝奇ものである必然性があったかと、今では感じています。

 何はともあれ、會川昇氏をはじめとするスタッフの方々には、素晴らしい物語をありがとうございます、と心からの感謝の気持ちで一杯です。
 また新しい物語で出会えることを祈りつつ…


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