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2007.11.13

「服部半蔵 日と影と」 重なり合う日と影

 服部一族の頭である父・半三に連れられ諸国見聞の旅に出た小次郎は、今川義元の下で人質として暮らす竹千代と出会う。かねてより松平氏に仕えていた父ともども、竹千代を主君と仰ぐこととした小次郎は、旅を続ける中、風変わりな若者・藤吉郎や軍学に秀でた光秀、伊賀の抜け忍・五右衛門らと出会う。やがて成長した小次郎は、半蔵の名を名乗り、父に代わって竹千代=松平元信を世に出すべく、活動を開始する。その最初のターゲット、今川家に対して半蔵が取った策は…

 えとう乱星先生の最新作は、「服部半蔵 日と影と」。最近は伝奇もの以外の時代小説や、現代を舞台にした伝奇ジュヴナイルを発表されていた氏ですが、本作は徳川家康に仕えた服部半蔵正成を主人公に据えた忍者ものであります。
 最近の文庫書き下ろし時代小説といえば、市井ものや剣豪もの・奉行所ものが主流(…というより九割方それ)、戦国時代を舞台にした作品も、戦国大名を主人公にしたものがほとんどで、このような忍者ものは、実は最近はかなり珍しくなっております。
 そんな、二重の意味で久しぶりの作品ですが、出し惜しみのない贅沢なネタの投入ぶりで、久しぶりの忍者を中心に据えたドラマを堪能させていただきました。

 タイトルとなっている「日と影と」とは、そのまま半蔵の生き様を指します。主君たる松平元信=元康=家康に天下(=日)を目指させるため、己は影の存在に徹しようとする半蔵は、まさに忍者の鑑でありますが、しかしそこにはもう一つの日と影が存在します。
 決まった主を定めず、そして群れることなく働く、それまでの伊賀の忍びたちを影とすれば、武士として、侍として主君に仕え、世に出んとする半蔵は日。そのような日と影との二重構造は、なかなかにユニークな視点と感心いたしました。

 また、少年時代の秀吉、青年時代の光秀を登場させた作品は無数にありますが、そこに半蔵を絡めてきたのは本作ならではの工夫と言えましょう。
 その他、車輪眼の持ち主が久々登場するなど、古くからのえとうファンにはニヤリとできる部分もあり、その点でも楽しむことができました。

 もっとも――アイディアの豊富さと、それゆえの展開の早さが仇となって、一つ一つのエピソードの描写が浅めになっているのが、非常に残念なところ。長いタイムスパンの物語であるだけに、展開を急ぐ必要はありますし、分量の制限ももちろんあるのだとは思いますが、実にもったいないことではあります。


 さてこの第一巻では元康の独立の契機となった桶狭間の合戦までが描かれますが、まだまだ家康の天下取りまでは前途多難です。
 特に終盤、元康と半蔵、その両方が長子を授かった旨描かれますが、この子らがいかなる運命を辿ったかは、日本史好きの方ならば良くご存じの通り。
 この辺りに見られるように、決して明るいばかりではない主従の生き様の日と影とを如何に描いてくれるのか、期待して次巻を待ちます。


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