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2007.11.14

「大江戸ロケット」(漫画版)第一巻 「リアル」な大江戸?

 先日めでたく大団円を迎えたアニメ「大江戸ロケット」ですが、このアニメ、そして原作舞台に続く三つ目の「大江戸ロケット」でる漫画版の単行本第一巻が発売されました。

 もちろん「大江戸ロケット」を名乗る上は、基本的な設定は同一――すなわち、花火師の少年・清吉が、宇宙からやって来た少女・ソラを天に帰すため、月まで届くロケットを開発しようと悪戦苦闘するお話でありますが、作品から受ける印象は、他のメディアのそれとは大きく異なります。

 一言で言ってしまえば、この漫画版は、舞台・アニメにあったナンセンスギャグ・パロディの要素をばっさりと切り捨てた――誤解を恐れずに言うならば――「リアル」な作風。
 作者の浜名海氏は、これが初単行本とのことですが、いかにも「アフタヌーン」誌の四季賞出身らしい細やかな描写力で、荒唐無稽な絵空事を、うまく地に足の着いた世界に引き寄せることに成功しているかと思います。

 キャラクター設定についても、基本ラインは押さえつつも、作風に合わせたアレンジが行われています。特にその度合いが大きいのは、他ならぬヒロインのソラであり、原作での天真爛漫なキャラクターとは異なる、清吉たちとも容易に慣れ親しもうとしない、一種クールな性格付けがなされています。

 また、清吉についても、一介の花火職人ではなく、天保の改革で職を失った花火師の村から、自分たちの腕を見せつけるために江戸に送り込まれた一種の工作員というバックグラウンドが与えられており、なるほど、これはこれで説得力のある設定ではあります。

 しかし――色々な制約(という表現は適切ではないかもしれませんが)があった作品をベースにして、それをより「リアル」に改めた作品が、オリジナルより必ずしも面白くなるとは限りません。
 本作がそうだ、と現時点で言うつもりはありませんが、やはり雰囲気をリアルにすればするほど、かえって虚実の境目がくっきりと見えてくるのもまた事実。

 例えばこの第一巻の後半、村の人々による月への花火のための協力を賭けての清吉と鉄十(こちらでは村長の息子の、普通にナイス兄貴)龍勢勝負ではそれが顕著なように思えます。肝心の、清吉工夫の二段ロケットのビジュアルが、どうにも作品から唐突に浮いてしまっていて…

 もちろん原作は同じと言い条、本作は全く別の作品であり、楽しみ方もそれと異なってももちろん問題ありません(まあ、それと作中の違和感ないリアリティというのは別物なのですが…)。
 果たしてこの「リアル」な世界観をどこまで貫くことができるか。この巻では顔見せ程度の登場だったもう一人の来訪者、そしてそれを追う黒衣衆など、かなり重い描写になりそうなだけに、興味深いものがあります。


「大江戸ロケット」(漫画版)第一巻(浜名海&中島かずきほか 講談社アフタヌーンKC) Amazon

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受信: 2007.12.04 23:49

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