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2007.11.04

「ストレンヂア 無皇刃譚」 まさに大作時代劇!

 何者かに追われる少年・仔太郎を救った浪人・名無し。仔太郎に雇われて彼を赤池国に送り届けることとなった名無しだが、仔太郎を追っていたのは、明国からの武装集団と結んだ、赤池国の領主の配下だった。そうとは知らぬ仔太郎は、辿り着いた先の寺院で明国側に引き渡されてしまう。仔太郎の血を不老不死の妙薬の原料と信じ求めていた明国側の意図を知った赤池国の領主は、仔太郎を横取りしようとするが明国側もこれを察知。さらに国盗りの野心に燃える領主の腹心・虎杖将監は、これを好機と行動を開始し、山中の砦を舞台として、赤池側と明国側の死闘が始まる。そして名無しもまた、仔太郎を救うべく己の刀の封印を解き、決戦の場に身を投じる――

 あのBONESが製作する時代劇アクションとして相当に前評判の高かった本作「ストレンヂア 無皇刃譚」。このようなサイトを運営する身として、私もしても絶対見逃すわけにはいかんと思ってきたのですが、なかなか観に行く機会がなく、ようやく最終日ギリギリに観ることができましたが――いやはや、今まで観ていなくて大失敗。私がこれまで観た長編時代劇アニメーションの中で、一、二を争う完成度の良作でした。

 ストーリー的には時代劇の王道、素性不明ながら滅法腕の立つ風来坊が弱き者を助けて大活躍を繰り広げ、去っていくというやつですが、そこに大明国からの使者を絡めたことにより、物語のスケール感が一気にアップ。絵や動きのクオリティも相当高く、まずは映画館で観るに相応しい大作と呼べる作品であったかと思います。

 特に、ある意味作品のキモであるアクションシーンは、集団対集団から個人対個人に至るまで、素晴らしいクオリティ。冒頭の、主人公の宿敵となる青い目の剣士・羅狼が野伏りを殲滅するシーンからして、その立体的なアクション設計に驚かされました(この、明らかに日本のチャンバラとは異なるアクションを取り入れることができたのも、明国を物語に絡めたことによる効果の一つでしょう)。

 一番心配していた――というか突っ込みどころとなるかと思われた、芸能人三人の声の演技についても、十分問題はなかったと思います。
 特に、主人公を演じた長瀬智也は上上出来の部類。簡単なようで難しい、飄々とした主人公のキャラクターを巧みに演じていたかと思いますし、それが一転――クライマックス、仔太郎を救うために、封印していた刀を抜き放つシーンの咆哮には、演出とのシンクロも相まってもう鳥肌モノ。「待ってました!」と言いたくなる名シーンであります。

 そしてもう一人の主役と言うべき仔太郎役の知念侑季は、まあ普通の子役の演技、といったところでしょうか(もっともアニメの世界では、遙かに達者に子役の声を当てる方がいるわけですが)。
 竹中直人は…よくあの役引き受けたな。

 しかしキャラクター描写的にも、演技的にも抜きんでていたのは、名優・山寺宏一が声を当てた羅狼。
 主命よりも仲間よりも、ただ強敵との対決をこそ望むバトルマニアというキャラクター自体は、決して珍しいものではありませんが、この羅狼においては、その人間として明らかに歪んだ部分を、淡々と描き出していくことにより、不思議なリアリティがにじみ出ています。
 そんな男と、ただ少年の命を救うためだけに刀を振るう名無しが、人間の醜い我欲・妄執が生み出した戦場の中で相まみえるというラストバトルは、戦国乱世という状況の中で、人間の諸相を描いて見せた本作の象徴と言うべきシーンでしょう。
(最初に観たときは、もう少し明国側のキャラは人間離れしていてもいいように思いましたが、これはあくまでも本作が人間同士の闘争を描いた作品だからなのでしょう)

 ちなみに本作では、シーンによっては明国のキャラは中国語で会話するのですが、他のキャラが吹き替えなのに対し、山寺氏のみは吹き替えなし。
 しかしそれでもキャラの感情がしっかりと伝わってくるのは見事の一言ですが――考えてみれば犬役でも犬の鳴き声で喋っていると評される氏のこと、外国語くらいものの数には入らないのかもしれません。


 なにはともあれ、久しぶりに時代劇らしい時代劇を観た! と満足できた本作。おそらくは観る度にまた色々と発見があるのではないかと思われますので、DVD化された時にまた見返すのが楽しみです。


 ちなみにこれは私個人の印象なのですが、どうも本作(シチュエーションは違っていましたがコミカライズ版も)のラストには、濃厚に死の匂いが感じられるのですが…どうなんでしょうね?


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