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2007.11.07

「天保異聞 妖奇士 奇士神曲」 獄四「地上楽園」

 巨大化した豊川狐を一度は粉砕した往壓たち。しかし宰蔵は奇士に戻ることを拒み、復活した狐たちを連れ、長英と共に姿を消す。長英の狙いが、間宮林蔵の遺書に記された蝦夷地の果ての何ものかにあることを知った往壓たちは、アトルを江戸に残し旅立つ。そしてその地で彼らが出会ったのは、社に一人暮らす不思議な空気をまとった少女・媛だった。が、その姫を襲う長英の凶刃。媛の死と反応したかのように社の裏山が崩れ、氷の中に眠る巨大な姿が現れる――

 いよいよ残すところはラスト二話となってしまった「奇士神曲」、いや「天保異聞 妖奇士」。果たして如何なる物語が待ち受けるかと思いきや、これが怒濤の展開の連続。起承転結でいえば転がりまくったと言うべきか、本で言えば一読巻を置くあたわざると言うべき内容でありました。

 直接言葉を交わす機会がありながらも完全にすれ違ってしまった宰蔵と仲間たち。いかに火付けの罪があったとしても、本来の目的であった小笠原を目の前にしても、宰蔵の頑なな心は溶けないのが痛々しい。

 その一方で(?)大きく成長を遂げたと見えるのはアトルの態度。鳥居たちに、いわば人質同然の形で江戸に残ることとなったアトルですが、しかし、彼女自身は奇士たちが――いや往壓が戻ってくる場所となることと決め、笑顔で往壓たちを送り出します。
 ヒロインが、主人公の戻ってくる場所となるというのは、さほど珍しいシチュエーションではなく、むしろそれ自体は古臭さすら感じさせるものでもあるのですが、しかしそれまでアトルの魂の辿ってきた道程を考えれば、これは実に素晴らしいことだと素直に思えます。

 そんなこんなで奇士一行が長英を追って旅立つ先は、遙か蝦夷地も北の果て。間宮林蔵の蝦夷地探検は有名な話ではありますが、本作で語られるところによれば、それから帰って以来、林蔵は人が変わったように暗くなり、また周囲の人間を平然と売るようになった(かのシーボルト事件が、林蔵の密告により発覚したというのは有名なお話)という曰く付きの場所のようですが…

 と、その場所にものすごい勢いで到着してしまったのは、仕方ないとはいえ些か拍子抜けですが(もし一年間放映されていれば、この辺りはもっとじっくりと描かれていたのだと思いますが)、そこでアビとえどげんが出会ったのは、どうにも古風な美少女・媛。
 自分の記憶を持たず、そして村人たちからは敬して遠ざけられている様子の彼女の正体に対し、さりげなく厭過ぎる推理(「神の名は」を思い出した…のは儂くらいですか)を巡らせるえどげんに対し、アビは妙なデレっぷり。

 これは本作第三の年の差カップル誕生か、お姉さん許しませんよ! とアホなことを思っていたら、そこに突然飛び出したのは長英。その刃の前に、登場わずか十分程度で斃れた新キャラに、「貴重な坂本真綾が…」とこちらが呆然とするまもなく(元閥が感情を荒げた声を出すのが珍しい)、社の裏山から現れた氷の中に眠る影は…
 神曲だけにルシフェル、などということはありますまいが、いずれにせよ善きものとは考えにくいモノであります。

 全く、あの第一話からわずか四話のうちにここまで物語が膨らんでいくとは全くもって想定の範囲外でありますが、さて残り一話、わずか一話でどのようにこの物語を結ぶというのか…期待と畏れ半ばする思いの中、最終第五話については稿を改めます。


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