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2007.11.03

異形の伝奇活劇「エンバーミング」連載開始!

 鳴り物入りで発刊した新雑誌「ジャンプスクエア」――その表紙と巻頭カラーを飾ることとなったのが、和月伸宏先生の異形の伝奇活劇「エンバーミング」であります。
 19世紀末のイギリスを舞台に、フランケンシュタイン博士の遺産――人造人間と、それを狩る者たちの死闘を描くこの作品は、これまで二度、短編が掲載されていますが、今回めでたく長編として連載開始。第一話である今回は、過去二回の主人公たちと異なる、第三の戦士たちが登場することとなります。

 五年前、ツギハギだらけの体の殺人者の襲撃を受け、家族を皆殺しにされながらかろうじて生き残った二人の少年と一人の少女。復讐を誓った少年たち――ヒューリーとレイスは、遂に仇と対峙したものの、そのあまりに強大な力の前に斃れるのですが…
 と、長編で仕切直しての新連載ということで、今回は世界観は短編の方と共通であることを匂わせつつも、もう一度作品の世界観を語り直すような構成。
 そのため、新創刊第一話にしては、いささか展開がゆったり目かな…と個人的には思わないでもないですが、しかし、現実と地続きでありながら、その皮膜の下に広がる奇怪な世界観と、その中で生きる、決して善悪単純ではない人々の姿を描くには、これくらいで丁度良いのかもしれません。

 いずれにせよ、ストーリーの方もまだどちらに転がっていくか、しかとは見えないのですが、まず間違いないと思われるのは、掲載誌の対象年齢層が上がったことで、これまで和月作品の節々で描かれていた「黒い」部分が、より前面に出てくるであろうこと。
 これはこれでもちろん、物語として――特に本作のような設定の物語では――不可欠な要素かと思われますし、それも作者の魅力の一つかとは思いますが、やはりそれでも、和月ファンの一人としては、これまで作品を貫いてきた精神性も、忘れず残して欲しいと心から思います。
 それは言ってみれば、人としてあること、心正しくあること…たとえ困難でも、そうあろうと、そうなろうと努めること。そんな人間の姿を描くこと。
 もちろんこれは個人の勝手な思いこみではありますが、キャラクターや物語以上に、私が和月作品に魅力を感じてきた部分であるだけに、そこはこれからもそうであって欲しいな、と。

 もっとも、これはまず間違いなく杞憂であるかと思います。人が造り出した、人にあらざる人――人造人間と、人間の相克を描く(であろう)本作は、必然的に、これまでの作品以上に人間という存在の在り様を、掘り下げて描かれることになるでしょうから…


 何はともあれ、ヒューリーとレイス、二人の青年を襲った運命はあまりに過酷(おそらくはレイスのみならずヒューリー自身も…にしてもレイスとフラットライナーとはまた直球なネーミング)
 彼らの未来はどこにあるのか。そして、彼らの他に人造人間を狩る者たち――既に表紙には登場している短編版の主人公たちとの出会いはどうなるのか。
 肝は冷えるが胸は熱くなる…そんな作品になることを期待します。

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