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2007.12.29

2007年の十作品(前編)

 今年も残すところあとわずかとなりました。伝奇ものに限った場合でも様々な作品が発表・発売されました2007年(もっとも喜んでばかりはいられない状況なのですがそれは後述)が、試みに、その中から、私の心に特に残った十の作品を挙げたいと思います。
 2007年の時代伝奇ベスト10などという大げさなものではなく、まあ三田主水の野郎はこういう作品が好きなのね、程度に思っていただければ。

というわけで私の十作品は次の通り。
 「柳生百合剣」(荒山徹 朝日新聞社)
 「五瓶劇場 からくり灯篭」(芦辺拓 原書房)
 「旧怪談」(京極夏彦 メディアファクトリー)
 「絵巻水滸伝」(正子公也&森下翠 魁星出版)
 「次郎長放浪記」(原恵一郎&阿佐田哲也 リイド社SPコミックス)
 「Y十M 柳生忍法帖」(せがわまさき&山田風太郎 講談社ヤングマガジンKC)
 「天保異聞 妖奇士」(アニプレックス)
 「大江戸ロケット」(ジェネオンエンタテインメント)
 「モノノ怪」(角川エンタテインメント)

 どれも一度ならずこのブログで取り上げた作品ですが、そのメディアごとに簡単に紹介いたしましょう。

小説
 時代小説の刊行点数はおそらく前年同様かそれ以上と思われる2007年ですが、しかし、こと時代伝奇小説に限って言えば、その数は減少の一途にあるようにすら思えます。
 正直なところ、時代伝奇小説ファンには寒い時代となった、という感がひしひしとしますが、そんな中でどこまでもマイペースで躍進(暴走)したのは荒山徹先生でした。
 その荒山先生の「柳生百合剣」は、昨年の連載開始時から、色々な意味でハラハラさせられましたが、完結してみれば、時代伝奇ものとしても十兵衛ものとしても、群を抜いてユニーク…は当たり前として、実に中身の濃い作品になっていたという印象があります。
(ちなみに本作とほぼ平行して連載・単行本化された「柳生大戦争」は、個別のエピソードの爆発力で勝るものの全体の完成度としては大分譲るものがあったかと)

 一方、時代ものとミステリを融合させた作品が少なからず刊行された中で異彩を放っていたのが「五瓶劇場 からくり灯篭」でした。大坂と江戸を股にかけて活躍した実在の歌舞伎作者・並木五瓶を主役に据えた四つの短編を収録した本書は、ミステリあり伝奇ありホラーありと実にバラエティに富んだ佳品であり、題材選びの妙、ストーリーテリングの妙で、伝奇ファンとして印象深い作品集でした。

 また、時代伝奇小説というものからは外れますが、非常にユニークな試みとして印象に残ったのは「旧怪談」。根岸鎮衛の「耳袋」を現代的文体でリライトするという、一発ネタ的な試みではあるものの、その中から「実話怪談とは何か」という問いかけが浮かび上がる様は、さすがは京極先生、と言ったところでしょうか。
(「耳袋」と言えば、風野真知雄先生が「耳袋秘帖」でブレイクしたのは嬉しい驚き)

 そして最後には中国ネタ、本年をもってめでたく第一部全十巻が完結した「絵巻水滸伝」を。ここに至るまで、決して平坦な道のりでなかったことは、ファンであればよく知るところですが、それを乗り越えて遂にここまで…と、感無量でありました。
 水滸伝と言えば、北方水滸伝の文庫化及びその続編「楊令伝」の刊行も快調でしたが、面白い水滸伝はこっちにもあるって! と叫ばせていただきます。

 ちなみに小説部門の次点としては、何故このシリーズがもっと話題にならないのか理解に苦しむ「世話焼き家老星合笑兵衛 義侠の賊心」、伝奇ではないですが新シリーズ第一弾としては破格の完成度の「雷迅剣の旋風」を挙げておきます。


(予想通り明日に続く)


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