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2008.01.04

NHK新春時代劇「雪之丞変化」 表裏一体の雪と闇

 今年のNHKの新春時代劇は、滝沢秀明主演の「雪之丞変化」。原作小説は約70年前(!)に発表され、これまで幾度となく映像化されている作品ですが、これを果たしてどのように料理してくれるか…期待半分恐れ半分で見ましたが、これが、二時間弱という限られた時間の中で思っていた以上に原作に沿った作品となっていました。

 作品自体は、三人の悪人に嵌められて財産も妻も全てを失って狂死した大商人の遺児が、長じて花形歌舞伎役者となって、悪人たちに復讐を図るというお話。原作では悪人は五人でしたが、その辺りはドラマを時間内に収めるために仕方のない改変ですし、不自然さはなかったかと思います(もっとも、こちらはオミットされなかったお初(高岡早紀)と門倉平馬(嶋田久作)が、原作では色々と活躍したにもかかわらず出番が非常に少なくなってしまったのは残念)。

 さてこの雪之丞、実は剣の達人でもあるのですが、しかし直接悪人に手を下すということは基本的にしない。ではどうやって復讐を…と言えば、その主たるものは、悪人の首魁・土部三斎の娘で将軍の側室である浪路を、平たく言えばたらしこんで操ってしまおうというもの。
 冷静に考えると、いかに強大な相手にほとんど徒手空拳で挑むとはいえ、随分とヒーローらしからぬ手段ではありますが、もちろんそこで雪之丞が自分の良心との葛藤に悩まされる様が、ドラマのキモと言えます。
 元々この原作は華やかな印象とは裏腹に、かなり色と欲が入り乱れる内容で(考えてみれば浪路だって世間知らずのお嬢様っぽい造形ではありますが、客観的に見れば役者遊びで身を持ち崩した大変な娘さんであります)、その辺りうまく料理しないと相当生臭くなってしまうのですが、そこをこのドラマでは滝沢秀明と戸田恵梨香という、あまり生臭さを感じさせない美男美女を配することで、うまく回避してみせたな、という感がありました。
 もっとも、浪路の悲劇は戸田恵梨香嬢の熱演もあって、原作以上に悽愴苛烈なものとなりましたが――

 もう一つ面白いな、と思ったのは、第二の主人公と言える義賊・闇太郎の存在。この闇太郎というキャラクターは、最初の映画化以来、雪之丞役が二役で演じるのがお約束になっていて、今回のドラマ化でもそれは踏襲されております。この二役、確かにお芝居的には華がありますし良いのですが、ドラマ的にはそんなに必然性ないよな…(原作でも別に瓜二つ設定でもなかったですしね)と以前から思っていたのですが、今回のドラマを見ていて何となく理解できました。闇太郎は、文字通り雪之丞のダークサイドの体現という役割を担わされているのですね。
 闇太郎は基本的に貧しい者には優しい義賊で、雪之丞の意気に感じてその復讐を助けるキャラクターではありますが、ドラマでは、浪路への接し方や悪人の一人・長崎屋へのほとんどテロ活動に近い攻撃など、かなり冷徹な側面も持つ人物として描かれていたやに感じられました。もちろん復讐劇である以上、綺麗事ばかりでは済まないのは当たり前、ましてや強大な敵を相手にしているのですから…とは言うものの、雪之丞一人ではこのような手段は使えなかったのは明らかな話。彼と心を一つにしながらも、彼以上に非情かつ直接的手段を行使し得るキャラクターが、ドラマ的に必要になることがわかります。
 また、元々は他人の割りには異常なまでに闇太郎が雪之丞に肩入れするのも、彼が雪之丞とドラマ的には表裏一体のキャラクターであることを考えれば、理解できるような気がします(正直な話、原作だけではどう考えても闇太郎って雪之丞のことを…としか思えないのですよね)。更に言えば、原作とは異なる闇太郎の去就も、復讐を終えて、雪之丞にダークサイドは不要となった、と解釈することができるでしょう。

 と、わかったようなわからないような理屈をこねくり回してしまいましたが、往年の名作が、こうして現代のキャスト・スタッフの手で復活するというのはありがたいお話(もっとも、新年早々観るには少々重たい内容ではありましたが…)。これを機に、絶版になっている原作小説も復刊していただけるとありがたいのですが、さすがにそれは難しいかな。


 …あと、本多博太郎の暴走っぷりが異常でした。声優で言えば規夫みたいな存在感だな、ありゃあ。

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