« 「暁光の断 勘定吟味役異聞」 相変わらずの四面楚歌 | トップページ | 「あやかし同心 死霊狩り」 帰ってきた大江戸怪奇大作戦 »

2008.01.23

「外道笠」 いい時代劇画を見た!

 恥ずかしながら、時代劇画というジャンルについてはまだまだ未熟な私ですが、それゆえ、今まで知らなかった名品に出会うと、普段以上の喜びがあります。
 本作もその一つ。手段を選ばぬその所業から「外道笠」と呼ばれる賞金稼ぎの渡世を描く連作シリーズであります。

 主人公は、まだ青年ながらその名を知られた凄腕の賞金稼ぎ。しかしその名はむしろ悪名、目標を仕留めるためにはどんな卑怯な手段であっても躊躇わず使うそのスタイルに、三度笠の渡世人姿が相まって、ついた渾名が「外道笠」であります。
 何しろ、後ろからの不意打ちは当たり前、罠を仕掛ける、寝込みを襲う…あまりに凄まじいやり口ゆえに、逆に悪党どもから賞金をかけられる始末。追うも追われるも――いずれにせよ、孤独の中で外道笠は旅を続けます。
(ちなみに、私が本作を読んだとき真っ先に私の頭に浮かんだのは、横山光輝先生の名作「血笑鴉」。ビジュアル的には大きく異なりますが、ともに綺麗事抜きのアンチヒーローということで)

 しかし、外道笠が単なる外道ではないのが本作の魅力であります。
 孤児で途方もなく貧しい少年時代を送った彼は、自分では何もしようとせず、人に頼るばかりの者には冷たく当たりますが、貧しい中、苦しい中で必死に生きようとする弱者にはとことん弱い。
 普段はどこまでもダーティーな暴れっぷりを見せても、健気な弱者の涙を止めるため――俺は何をやっているんだと自問自答しつつ――刃を振るう外道笠の姿は、間違いなくもの凄いツンデレヒーロー。野良犬の仔のためにやくざの一家を壊滅させるなんたこの人ぐらいのものでしょう。
(もっとも、第二巻に入った辺りから、やたら女を助けるので、単に色香に迷っているように見えるのですが…)

 もちろん、キャラクター、物語としての面白さのみならず、画の美しさ、漫画としての動きの描写の確かさも見事の一言。どこまでも殺伐とした世界観ながら、どこか叙情性すら感じさせるのは、間違いなく、この画によるところが大でしょう。
 題材やストーリー的には、決して今風の作品というわけではありませんが、それがむしろ新鮮さすら感じさせてくれる本作、「いい時代劇画を見た!」と腹の底から思える作品であります。


「外道笠」(草野雄 双葉社アクションコミックス 第一~二巻(続刊)) 第一巻 Amazon/ 第二巻 Amazon

|

« 「暁光の断 勘定吟味役異聞」 相変わらずの四面楚歌 | トップページ | 「あやかし同心 死霊狩り」 帰ってきた大江戸怪奇大作戦 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/17791396

この記事へのトラックバック一覧です: 「外道笠」 いい時代劇画を見た!:

« 「暁光の断 勘定吟味役異聞」 相変わらずの四面楚歌 | トップページ | 「あやかし同心 死霊狩り」 帰ってきた大江戸怪奇大作戦 »