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2008.01.18

「信貴山妖変 嶋左近戦記」 伝記と伝奇の難しさ

 筒井城に忍び込んできた女忍・志乃を捕らえた島左近。彼女が松永久秀に捕らえられた妹と引き替えに茶器を盗み出そうとしていたと知った左近は、これを機に筒井家の宿敵たる久秀の懐に飛び込み、討とうとする。だが、これが長きに渡る久秀との暗闘の始まりだったとは、この時の左近には知る由もなかった…

 第二回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞に輝いた本作は、副題にある通り島左近清興が、題名の信貴山城の主・松永久秀と死闘を繰り広げる様を描いた作品です。

 左近といえば、どうしても「治部少に過ぎたるものが二つあり、島の左近と佐和山の城」から、石田三成の臣というイメージが強くありますが、元々は筒井順慶の臣。そして筒井順慶といえば、大和国を巡り、松永久秀の宿敵とも言うべき存在であります。

 左近と久秀は、その絶頂期が大きくずれているというイメージから、それぞれ全く別々の時代の人間という印象が強く、フィクションの世界でもこの両者を絡めた作品はかなり少ないように思います(つい最近同じ版元から発表されましたようですね)。
 しかしこの両者に上記の接点があることに着目し、その戦いを善魔入り乱れる伝奇小説に仕立てあげたのは、まずコロンブスの卵的着眼点として評価できます。

 しかし…確かにアイディアとしては実に面白いものの、内容的、構成的に見ると、ちょっと残念な部分があるのもまた事実。簡単に言えば、作中の史実を描いた部分と、伝奇的部分のバランスがあまり良くないと申しましょうか――失礼を承知で言えば、伝奇の部分が、史実の合間に挟まれた、付けたりのような印象があります。
 確かに、左近対久秀という物語の背骨はあるのですが、厳しく言えば、それに見合った伝奇的肉付けが今一つまとまっていないと言ったところでしょうか。

 戦記――伝記と伝奇と言っては駄洒落のようですが、題材が良いだけに、この両者のバランス取りの難しさを、今更ながらに感じさせられたことです。


「信貴山妖変 嶋左近戦記」(志木沢郁 学研) Amazon

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