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2008.01.13

「ジライ」 もう一化け欲しい人斬り退治

 時は幕末、諸国を巡り、狂気に陥った人斬りを斬る者がいた。隠密御庭番人斬り見廻り、通称「斬り捨て屋」の青年、名はジライ。人の心を失った人斬りの刃を、腕の黒手刀で打ち砕くジライの旅が続く。

 「鬼道天外かなめ」「新選組黙示録」といった、時代劇、時代ファンタジーを発表してきた乾良彦氏の新作が、この、幕末を舞台とした人情始末人もの(?)「ジライ」。
 普段は飄々とした者が、いざ外道に相対すれば凛然としてこれを討つ、というのは、確かにこの手の作品の定番パターンではあります。が、各話に登場する敵キャラクターの造形やストーリー構成など、なかなか捻った内容も多く、また、(無駄にグロい描写も多いのですが)アクション描写も達者で、何も考えずに読む分には、十分楽しむことができます。

 が――評価した後で恐縮ですが、時代ものなら何でも読んでやろう、という(私のような)マニア以外の方が、単行本を買ってまで読むべきか…と言えば、それは正直に言ってしまえば微妙であります。
 上記の通り、決してつまらないわけではない、いや水準の作品ではあるのですが、では飛び抜けて面白い、優れていると言われれば、首を傾げざるを得ないと言いましょうか…一言で言えば、エッジが立っていないように感じられます。

 そのせいか、普段であればスルーしてしまうような、作中の細かい(?)部分――「隠密御庭番人斬り見廻り」という役職名ってどうなんでしょうとか、そもそもこれ御庭番の仕事なのかしらとか、何よりもあんまり幕末らしい場面が出てこないなあとか――が気になって、作品を存分に楽しめないのはもったいないとしか言いようがありません。

 主人公の腕と一体となった「斬れ味は大業物のごとく その怪しさ妖刀のたぐい 一度打ち磨かれれば捨てることできぬ凶物」たる黒手刀、斬られた者は夢に抱かれて逝けるというその存在など、十分に面白いアイディアではあるのですが…

 もう一化けすれば、自信を持ってお勧めできる作品になるだけに、私にしては些か厳しい表現で取り上げさせていただいた次第。
(もちろん私は、この先の展開を見届けさせていただくつもりです。)


「ジライ」(乾良彦 少年画報社ヤングキングコミックス 第一~二巻(続刊)) 第一巻 Amazon/ 第二巻 Amazon

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