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2008.02.29

「シグルイ」第10巻 正気と狂気の行き来に

 いつまで続く(血泥の)泥濘ぞ、という印象の牛鬼牛股師範と伊良子の決戦ですが、遂に決着。さてこれで…と思いきや、とんでもない再起動がかかっての第十巻です。

 第九巻で、まさしく牛鬼と化したような暴れぶりで周囲に血と肉をばらまいた牛股。おそらくは時代漫画史上でも屈指のスプラッターバトル、白黒二色刷りであることを感謝したくなる惨状ですが、これが無明逆流れ封じであるのは言うまでもない話であります。
 ここで牛股の恐ろしいところは、どう考えても乱心したとしか思えぬ姿を見せながらも、その実、この逆流れ封じのように、極めて冷静に行動している点でしょう(何せ、乱心してみせたのすら一つの計算の上なのですから…)
 特に個人的に印象に残ったのは、片腕を失い地に伏した藤木を、完全に正気の眼差しで牛股が見やる場面。正気と狂気の行き来の描写の巧みさとともに、その両者が薄皮一枚で隣り合わせる様を浮かび上がらせる様に感心しました。

 そして、遂に敗れ去った牛股が束の間見たもの――かつてあり得たかもしれない、しかし自らの手で摘み取ってしまった未来の姿というまぼろしときたら…直接的な残酷さのみならず、残酷にはこういう形もあるものかと唸りました。

 …とか思っていたら牛鬼が今度はフランケンシュタインモンスターになっちゃうから困っちゃうんですが、まあこれはこれで。

 さて、これで藤木も伊良子も、ようやく物語冒頭の姿になったわけですが、この後、駿河城御前試合第一番に至るまでに何が待ち受けていることか。
 作者はかつて(本作連載開始の遙か以前に)「ハンデがある方が強いんだ」というような名言を残していますが、二人とも肉体はおろか、精神的にも社会的にもハンデだらけの存在。果たしてどちらが強いのか――最後の惨劇の幕が開くまで、あとわずかであります。


 …え、がま剣法?


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