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2008.02.03

「鞍馬天狗」 第三回「石礫の女」

 「鞍馬天狗」第三回は、鞍馬天狗と新選組の全面対決…でありつつも、一人の不幸な女性の生き様を描いた一篇。
 黒谷友香嬢演じる石礫のお喜代の、険がありながらも儚い美しさが印象に残りましたが、それだけではない、意外な発見があった回でした。

 ある時は巧みに言い寄って浪士を罠にかけ、またある時は石礫で大の大人を苦しめ――親を亡くして山賊に育てられ、幼い頃から石礫投げを仕込まれたという石礫のお喜代。
 何だか「水滸伝」にでも出てきそうな女傑ですが、しかし彼女が新選組のために動くのは、恋人が新選組の――それもあまり出来の良くない――隊士であったため…と来ると、お喜代とこの隊士・藤倉の逃避行でも描かれるのかと思いきや、さにあらず。
 藤倉はあっさりと刃傷沙汰で命を落とし、残されたお喜代は…という彼女の去就が物語の中心となります。

 不幸な生い立ちから、自分に近づいた男は皆死ぬと思い詰めた彼女を救ったのは、天狗…ではなく、倉田天膳の方。ここで彼が口に上らせた「私は不死身だ」という言葉を、クライマックスの殺陣の中で天狗から言わせることにより、天狗の正体を彼女に気づかせる構成も見事なのですが、個人的に強く印象に残ったのは、ここで天膳が、彼女の生い立ちを自分のそれと重ねて語るシーンでした。

 お喜代同様、自分も周囲の者全てを失った天涯孤独の身だと語る天膳=小野宗房。確かに、言われてみれば彼は、父を失い、継ぐべき家を奪われ、また育ての親も、仇たる叔父すらも、何もかも失った存在です(白菊さんはこの際目をつぶるということで)。…だがしかし、それによって自由を手に入れたと彼は続けます。
 ――鞍馬天狗と言えば「自由人」というイメージが非常に強いのですが、その自由の淵源を、この宗房の境遇に重ねてみせるとは、全く驚かされました。宗房=天狗というのは本作独自のアレンジであり、一体それが何のためなのか、正直今までよくわからなかったのですが、なるほどこういうことだったかと大いに感じ入った次第です。
 このアプローチの真価は、これからのドラマ展開を見なければわかりませんが、それを見極めるのが楽しみになってきました。

 …しかし、今回からしばらく脚本を担当する川上英幸氏は、円谷作品で多くの脚本を手がけたあの川上英幸氏でしょうか。そうだとしたら、こちらもまた楽しみであります。


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