« 「マーベラス・ツインズ 1 謎の宝の地図」 驕児、世に出る | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 残り一本でも… »

2008.02.05

「御庭番 明楽伊織」第一巻 明楽伊織、モラトリアムにもがく

 時代漫画ファンにとって、昨年の大ニュースの一つは、「御庭番 明楽伊織」の連載開始だったのではないかと思います。時代バイオレンスアクション漫画の金字塔「明楽と孫蔵」、そのビフォアストーリーが描かれることとなったのですから――
 そして、待ちに待ったその「御庭番 明楽伊織」第一巻がようやく発売されました。

 既に人間的にも技量的にもある程度完成された御庭番・明楽伊織が変態バイオレンスキンノー浪士をぶちのめしていた「明楽と孫蔵」に対し、本作はまだまだ未熟な、若き日の伊織の成長譚という性格が(今のところは)強くあります。
 時は弘化年間、海外の動乱の気配を感じつつも、まだ誰もが太平の世に暮らしていた、いわば江戸という時代のモラトリアムにあって、己の人生のモラトリアムの中でもがく伊織の姿が、本作では描かれていくことになります。

 もちろん、真っ当なもがき方が許されるわけもない森田漫画、伊織の前に現れるのは、伝説の月山忍び・荒吐の孫蔵に、明国拳法の秘伝を伝える景鶴芝といった強敵…というか恐ろしく元気で物騒な年寄りたちであります。
 「明楽と孫蔵」にも登場したこの二人が、伊織を容赦なく叩き潰す役に回るのは、前作読者としては嬉しいサービスであると同時に、大きな驚き。
 特に、前作で(それこそタイトルロールになるほど)伊織の頼もしい相棒であり忠僕であったあの孫蔵爺さんが、伊織のことを屑だの愚図だの馬鹿次男だの呼ぶ上に、ガチで殺しに来るのは、ショッキングな展開でありますが、しかしこの先、どのような出来事が二人の関係を変えていくか、胸躍るものがあります。

 ちなみに、森田節とも言うべき独特のリズム感溢れる名調子は本作でも絶好調。
「真の剣刃上知らぬ……腑抜けたガキは 遺体で父御の元へ……還す他無し――!!」
「…あのさ…死んじゃうよ? ……弟子!」「ウン……! マヌケが来てよく死ぬよ!」
など、時に物騒に、時にコミカルに戦いの場を盛り上げる台詞の数々には、思わずニンマリさせられます。

 さて――タイトルとは裏腹に、今は御庭番・明楽家の次男坊である伊織。その彼の肉親であり、越えるべき壁である父と兄が、本作には登場しているのですが、二人がどのように物語に絡んでいくこととなるのか。
 特に、本巻ラストで、それまでの謹厳実直たる姿とは異なる顔を垣間見せた兄・正継(雑誌掲載時、彼が密かにナポレオンに憧れていた描写をすっかり見落としていたのは不覚でした)がどう動くか――雑誌掲載時に読んで、私がひっくり返ったその後の展開を、早く単行本でも読みたいものです。


 …そして、角川でも双葉でも、「明楽と孫蔵」を早く再刊すべきだと思います。


「御庭番 明楽伊織」第一巻(森田信吾 角川書店チャージコミックス) Amazon

関連記事
 「明楽と孫蔵」(再録)

|

« 「マーベラス・ツインズ 1 謎の宝の地図」 驕児、世に出る | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 残り一本でも… »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/17960516

この記事へのトラックバック一覧です: 「御庭番 明楽伊織」第一巻 明楽伊織、モラトリアムにもがく:

« 「マーベラス・ツインズ 1 謎の宝の地図」 驕児、世に出る | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 残り一本でも… »