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2008.02.13

「ネリヤカナヤ」第一巻 ユニークな試みの水滸伝記

 誠に残念なことながら、現代の日本では三国志に知名度の点で遠く及ばない水滸伝ですが、それでも想像以上に多くの二次創作が毎年発表されています。
 本作「ネリヤカナヤ」もその一つ。ネリヤカナヤとは聞き慣れない言葉ですが、奄美の言葉で、沖縄で言う「ニライカナイ」と同じもの――すなわち「海のかなたの楽園、常世」の意であります。おそらくは水のほとりの理想郷・梁山泊を指してのタイトルでしょうか。

 この第一巻では、豹子頭林冲と花和尚魯智深の出会い、そして開封府から旅立った二人が立ち寄った桃花村での大騒動が描かれます。
 面白いのは、林冲の設定がだいぶアレンジされていることで、たとえば元の身分については、原典では八十万禁軍の槍術師範だったのが、こちらでは尚書省刑部長官付きの間者(巡視官)という設定。その彼が任務で登州に向かうのに、彼に興味を抱いた魯智深が強引に同行することになるのですが、水滸伝ファンであれば、この時点でストーリー展開に大きな違いがあることがわかるかと思います。
(原典では林冲が開封府から出るのは、原典では妻に目を付けた悪党に陥れられて流刑となったため)

 こうした差異は、本作が林冲を主人公に水滸伝の物語を再構成する、という基本コンセプトのためでありましょう。原典の前半は、好漢一人一人の銘銘伝のスタイルで、一人の好漢の物語が、次の好漢の物語に繋がっていくという形式でしたが、これが林冲メインのストーリーとなることで、このような形になったのであれば、なかなかユニークな試みだと思います。

 さて、スタイルだけでなく内容にも目を向ければ、この第一巻の時点ではまだまだプロローグといった印象ながら、シャープな絵柄と緩急つけたストーリー構成で、なかなか面白い作品となっており、さらに大きなアレンジとなりそうなこの直後の展開も含めて、今後も期待できそうな作品かと思います。


 ――が、ここで大きな問題が一つ。実は本作、元々は同人作品として発表されたものが、商業出版社から刊行されたのですが、この第一巻が出た後に出版社は倒産。
 続編は引き続き同人作品として刊行されているのですが、本サイトでは商業作品以外は基本的に扱わないこととしているもので…
 もちろんこれは私自身の勝手な拘りですし、何よりも水滸伝ファンとして本作を見逃しておく手はありません。何とかして続編も手にしたいと思っている次第です。


「ネリヤカナヤ」第一巻(朱鱶マサムネ 司書房CROWN SERIES) Amazon

関連サイト
 公式サイト

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