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2008.03.02

「若さま同心徳川竜之助 風鳴の剣」 敗者となるべき剣

 あれよあれよという間に人気作家(≒ほとんど毎月新刊が発売されている作家)の仲間入りをして、昔ながらのファンとしてはすっかり驚いている(って、何回も書いている気がしますが)風野真知雄先生の「若さま同心徳川竜之助」シリーズ第二弾です。
 幕末を舞台に、田安徳川家の十一男・竜之助がなんと奉行所の見習い同心になって…という設定は一見突飛ですが、しかしさすがは風野先生、前作同様、バランスのよい作品に仕上がっています。

 この第二巻でも、基本的な構成は前作同様、数話の短編連作の一方で、全体を貫くストーリーが展開されるという、最近の風野作品では――というかこのクラスの作品では――お馴染みのパターン。そして今回の全体ストーリーでは、葵新陰流を継承する竜之助に対し、
我らこそ新陰流正統と、かの疋田文五郎を祖とする肥後新陰流の刺客三人が、彼に挑戦してくることとなります。

 普通(?)であればこの刺客三人組は兇悪無惨な連中だったりするのですが、これがまた実に実に愛すべきキャラなのが風野節(登場してわずか数ページで、ああコイツらいいなあと思わされてしまうのがベテランの技と言うべきでしょう)。
 しかし――剣法者同士が激突すれば、その敗者がどうなるかは、明白であります。刺客たちが愛すべきキャラであればあるほど、時代遅れの剣法者同士の戦いの結末は、鋭くこちらの胸に迫ってきます。

 そしてその中で浮かび上がるのは、主人公である竜之助、そして彼の生家(の本流)である徳川家もまた、時代遅れであり、そして敗者となるべき存在であるという事実。
 実は、前作を読んだとき、個人的に少々不思議に思っていたのが、竜之助の設定でした。風野作品においては、主人公は圧倒的に表舞台をフェードアウトした老人、浪人者や窓際族が多いのが事実(唯一、作者をメジャーに押し上げた根岸鎮衛は社会的に功成り遂げた人物でありますが、しかし色々と裏街道を歩いてきた人物でもあります)。一言でいえば、勝ち組ではない人々にスポットを当てた作品がほとんどなのです。
 そんな中で、竜之助は――ほとんど飼い殺しの身だったとはいえ――家柄・年齢ともに異色の存在。しかし、本作を読んで、上記の如くその疑問も解けた気がします。時代設定が幕末なのも、この点と密接に関わってくるのでしょう。徳川家が敗者となる前夜の時代として――

 もちろん、敗者が敗者のままでは終わらないのが風野作品。竜之助が、その若さでこの先の道をどのように切り開いていくのか。
 どうやら第三巻では、彼のルーツとも言うべき、生みの母の謎が語られるようですが…


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