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2008.03.20

「真説水滸伝 最強の豪傑は誰だ」 完成度の高い副読本

 これまであまり興味を引くものがなかったので注意を払っていませんでしたが、コンビニ売りのムック本は、相当数が出ている様子。その中に現れたのがこの「真説水滸伝 最強の豪傑は誰だ」です。
 正直なところ、タイトルを見た時はさほど期待しなかったのですが、いざ手に取ってみればこれが想像以上に出来の良い一冊でした。

 内容としては、水滸伝は梁山泊の豪傑百八人(+α)一人一人に、人となりやエピソードが付された一種の解説本。原典(主に百八人集結まで)ベースの解説に加えて、人望・武芸・知恵・義侠心・得意技・悪漢度という六つのパラメータで、豪傑たちの個性が数値化されているのがなかなかユニークなところです(例えば宋江の場合は人望と義侠心がMAXでその他は今一つとか…)。

 さて、こうした解説本であれば、これまでも色々と出版されていたわけではありますが、本書が既刊と比べて優れている点の一つは、その実に要領を得た解説ぶり。
 三百ページ弱の本書では、豪傑一人当たりの紹介は一~三ページ程度と、かなり限られた分量。にもかかわらず、その中で豪傑それぞれの特徴、性格に来歴、梁山泊での活躍、そしてキャラクターとしての位置づけといった情報を不足感なくまとめており、内容を熟知していないとできないようなまとめ方にまず感心しました。

 しかし本書の真に優れた点は、その解説がポジティブかつ建設的な視点から描かれていることでしょう。
 原典の読者であればよくご存じかと思いますが、水滸伝という物語は、キャラクターやエピソードに、実に穴が多い物語。いきおい、解説本の類ではそうした点に対するツッコミがしばしば見られるわけですが、それが愛ゆえか、はたまた単に冷たいだけか、時にひどくネガティブな記述として現れている場合もあります(ご大家の本でもそうだったりしますから驚き)。
 本書には、それがない。もちろん、それは単なる美化や臭いものに蓋をしているわけではなく、欠点は欠点として受け止めつつ、しかしその欠点が物語に存在する意味を記すことで、より大きな視点からそれを受け止めることを可能としているのです。

 さて、ここで本書のスタッフを見てみれば、その出来の良さも納得。水滸伝研究会とクレジットされているものの、その実、文章は森下翠、イラストは(皆再録ですが)正子公也――つまり「絵巻水滸伝」のコンビであります。
 正直なところ、コンビニ本でこのお二方の名を目にするとは思いませんでしたが、良いものはどんなメディアでも良い。「絵巻水滸伝」にとどまらず様々な水滸伝の完成度の高い副読本として、もちろん水滸伝の入門書として、多くの方に手に取っていただきたい一冊です。


「真説水滸伝 最強の豪傑は誰だ」(水滸伝研究会 茜新社) Amazon

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