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2008.03.23

「耳嚢で訪ねるもち歩き裏江戸東京散歩」 裏世界の散歩ガイド

 江戸時代に書かれた怪談や奇談を扱った書物の中で、現代で最も良く知られているのは――実際にそれを読んだ人間が多いかは別として――やはり根岸鎮衛の「耳袋」でしょう。その名を借りた実話怪談集「新耳袋」から、現代語でリライトされた「旧怪談」、そして最近では、根岸鎮衛その人を主人公にした裏「耳袋」ともいうべき「耳袋秘帖」シリーズがヒットしています。
 そして本書は、その「耳袋」の世界を、古地図で辿ろうという、非常にユニークな試みの一冊。一見際物ながら、古地図ものでは業界屈指の人文社ならではの、なかなか充実した内容となっています。

 本書は、「耳袋」の中から特に妖怪や幽霊の物語など怪談奇談を抜粋(「耳袋」自体は怪談専門書ではないですからね)し、そのエピソードに関連した江戸の古地図(江戸切絵図)を並記するという構成。古地図だけでなく、それとほぼ同じエリアの現代の東京の地図も掲載されているため、両者を比較することも可能です。
 さらには、「耳袋」とは直接関係ない怪談奇談・伝説・巷説にまつわるスポットも紹介されており、まさに「裏江戸東京散歩」というタイトルに偽りなしといったところでしょう(ちゃんと同社からは「もち歩き江戸東京散歩」という書籍も発売されているのが愉快です)。

 「耳袋」スポット自体は、そうそう都合良く江戸の市中に散らばっているわけではないので、ちょっとこじつけめいた部分もありますが、しかし怪談という物語としてクローズしていた世界が、地図という現実に、文字通り重ね合わせて浮かび上がるというのは、想像以上にエキサイティングなものであります。
(さらに言えば、古地図と現在の地図を重ね比べるというのも、大げさに言えば時空を超える実にダイナミックな行為だと思います)

 上記の通り「耳袋」以外のソレ系スポットも掲載されており、私のようなちょっとわき道にそれたような江戸東京ファンにとっては、実に楽しい一冊。
 逆に言えば、こういう変態物好き以外が読んでも楽しいかどうかはわかりませんが、同好の士にとっては手元にあって損はないかと思います。


「耳嚢で訪ねるもち歩き裏江戸東京散歩」(人文社古地図ライブラリー別冊) Amazon

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