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2008.03.01

「サムライスピリッツ」(内藤版) 最も魅力的な…

 「トライガンマキシマム」単行本最終巻刊行記念(?)というわけで内藤泰弘版「サムライスピリッツ」を取り上げましょう。
 無印「トライガン」を刊行していた徳間書店の、今は亡き「ファミリーコンピュータマガジン」誌に連載されたものですが、今読み返してみると、単なるゲームの漫画化の枠を超えて、なかなかに味わい深い作品となっています。

 内容的には、ゲーム第一作目をベースとしており、天明期に復活した天草四郎に、覇王丸ら剣士が挑むという基本設定は同じながら――というより基本設定が同じなだけで――ストーリー的には完全にオリジナル。
 比較的読者に近い立ち位置のオリジナルキャラ・小綱(なんとなく緋雨閑丸を思わせるデザインですが)の視点から描かれる物語は、作者のイメージする「サムライ」の「スピリッツ」を十全に描いているかどうかは判断が分かれるかと思いますが、小綱の目に映る覇王丸の姿は抜群に格好良く描き出されています。

 この覇王丸、シリーズ作品の多くで主人公を勤めてはいるものの、冷静に考えてみると、存外に描きづらいキャラのように思えます。
 「豪快」「好漢」「剣術バカ」…覇王丸のキャラクターとしての性格・属性は、こういったものが挙げられるかと思いますが、これはいずれも、時代劇の主人公としては、当たり前と言えば当たり前のものばかり。ゲームとしてはともかく、漫画等でこの属性のみで覇王丸というキャラを描写しようと思えば、明らかに薄っぺらいものとならざるを得ません。

 その点を本作においては、小綱の視点から、あるいは覇王丸自身の視点から、強敵相手――それも人外の者であってすら――に剣を振るう、いや振るわざるを得ない覇王丸の心の動きを描き出すことにより、新たな(オリジナルの)属性を付与することなく、覇王丸を一定の厚みのある存在として描くことに成功しているといえるでしょう。
 こういった評価の仕方はあまり好きではありませんが、「サムライスピリッツ」の漫画化作品が数多ある中で、本作の覇王丸は、最も魅力的な覇王丸の一人と言えるかと思います。

 とはいえ――本作で一番目を引いてしまうのは、過剰なバイオレンス…というか残酷描写なのは、さて何と言ったものか。首や手が飛ぶのは当たり前、人肉嗜食やフリークスも頻出する内容は、よくもまあ小学生も読む雑誌に載ったものだと感心いたします。
 もっとも、直接的な描写かどうかはともかく、内藤作品の持つ「黒さ」というものは今でも健在ではありますし、そして人肉嗜食のフリークスというまんまのキャラが、後に「妖怪腐れ外道」としてサムスピシリーズに登場したことを考えると、これはこれで感慨深いものがあります。

 内容的には打ち切り的なものも強く感じられるのですが、「サムライスピリッツ」の漫画化としても、内藤作品の源流の一つとしても、無視できない作品かと思います。


「サムライスピリッツ」(内藤泰宏 徳間書店) Amazon

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ござる。駄目でござる。寒いし。朝から何も食っていない。つーことは拙者ヒモジイ思いをしている訳であり、ならば飯を食えなどどと恫喝される御仁もおられる事、これ火を見るより明らか。... [続きを読む]

受信: 2008.03.17 20:04

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