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2008.03.08

「柳生非情剣 SAMON」後編の1 二つの想いの間に

 あの隆慶一郎のあの「柳枝の剣」を、あの田畑&余湖コンビが描くということで、掲載第一回からこのブログで注目してきた「SAMON」も、いよいよ佳境。前編・中編と掲載されてきて、後編は二回に分けての掲載とのことで、起承転結の「転」に当たる今回は、まさに状況が大きく変転することとなります。

 遂に互いの想いを遂げた家光と左門。しかし幕府での柳生家の地位に、この二人の関係が却ってマイナスに働くことを恐れた宗矩は、左門を半ば無理矢理に隠棲させるという挙に出ます。
 しかし家光はあきらめるどころか、左門に再び会うため、左門を宗矩を上回る大大名に取り立てることを思いつく始末。事ここに至ってはと、宗矩は十兵衛を刺客として左門の元に送り込むことに…と、今回はここまで。

 原作を読んだ際には(というよりその元となった史実を知った際には)、家光の、恋は盲目と言わんばかりのあまりの無茶ぶりに唖然とした左門を大名にという件。
 しかし本作における家光と左門の関係は、一貫して、単なる色恋沙汰というだけでなく、互いに心に空隙を抱えた者同士の求め合いという形で描かれてきたため、無茶は無茶ながらも、止むに止まれぬ家光の渇望ともいうべきものが伝わってきて、理解できるものがあります。

 その想いに対置して描かれるのが、宗矩の柳生家発展への執念。ある意味純粋な家光の想いに比して、お家大事、というより己の積み重ねてきたことを失うことを恐れる宗矩の想いは――父・石舟斎との確執のエピソードが補強されていることもあって――これもそれなりに納得できるのですが、全く同情する気になれないのは、これはもう宗矩の逆人徳というべきでしょうか。

 実際のところ、宗矩を描く作者の筆は今回異様なまでに乗っていて、虎眼流並みに大人げない十兵衛にワナワナきたり、「尻一つで」を連呼したりと、原作を離れながらも、隆慶作品での黒宗矩・ダメ宗矩イメージを完璧に再現していて思わず爆笑しました唸らされました。
(今回が荒山徹ファンの間で大反響なのもむべなるかな)

 しかし考えてみれば、原作を離れながらも、原作のイメージをきっちりと再現するというのは、何も宗矩像に限らず、本作においては当初から行われていたこと。
 改めて今回の漫画化が、実に幸福な出会いであったと感心すると同時に、二つの想いの間に立たされた左門と十兵衛の対決が描かれる、「結」たる次回においても、そのスタイルを貫いていただきたいと願う次第です。


「柳生非情剣 SAMON」(余湖裕輝&田畑由秋&隆慶一郎 「コミックバンチ」2008年第14号掲載)


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